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Letters From SPARX ~2022年5月 月報まとめ~

こんにちは!スパークス・アセット・マネジメント、公式note運営チームです。
株式市場も少しずつ落ち着きを見せてきた当月、低迷した企業については投資の好機と捉えたコメントや、直近の状況を踏まえた投資アイデア、高PER銘柄への投資は本当にハイリスクなのか?など、今月も各ファンドマネジャーが注目するトピックが盛りだくさんです。
ぜひ興味のある内容について、リンク先でご覧になってみてください。

■高PER銘柄への投資はハイリスク?― スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)

当ファンドの投資スタイルであるグロース株投資で陥りがちなワナは、将来の利益成長を楽観視し過ぎて、本源的価値に対して大幅に割高な株価で買ってしまうことです。これは後々痛手を被ることになります。多くの株式市場参加者が将来見通しを大きく読み誤った事例としては、2000年ごろに発生したインターネットバブル崩壊があげられますしかし、グロース株投資の象徴ともいえる高PER銘柄に投資することは本当にハイリスクなのでしょうか?昨今のような長期金利上昇局面で高PER銘柄の保有を続けることは本当にハイリスクなのでしょうか?当ファンドでは市場平均PER(株価収益率)を上回る銘柄でも、ビジネスが参入障壁に守られていることによって今後も平均を上回る利益成長を続ける銘柄は、現在の株価水準がその成長性に対して大幅に割高でない限りは魅力的な投資対象だと考えます。
(中略)2021年9月の月次報告書で触れたとおり、株式市場は将来予想の精度において、あらゆる個人の能力をも上回るとされる「集合知」の典型例です。即ち、株式市場は時として大きく間違うことはあるものの、大抵の場合は将来の見通しを的確に言い当てているということです。従って成長株に対して付けられる株価についても、将来の高成長を見越して市場が適正な高PERを付けているケースは少なくないと思われます。
米国では、1970年代初頭までNifty Fifty(ニフティ・フィフティ)という当時の優良銘柄群の株価が高騰した相場がありましたが、その後1972年末を境に1年半で大幅下落したという時期がありました。当時の時代背景として高インフレ、高金利時代に突入したというのは今日の相場環境とよく似ています。Nifty Fifty銘柄とは、機関投資家がこぞってファンドに組み入れていた約50社のグロース株です。例えば、Avon Products社、 Disney社、 McDonald’s社、Polaroid社、Xerox社は各業界においてそれぞれ市場トップクラスのポジションにあり、強固なバランスシート、高い利益率、高い利益成長実績などを理由に、「どんなに高い株価でも買っても必ず儲かる」ともてはやされていました。これらの銘柄の平均PERは42倍とS&P500指数の19倍を大幅に上回るものでした。果たして、市場は間違っていたのでしょうか?これらの銘柄は永遠に株価が低迷したのでしょうか?
1998年に発表されたJeremy Siegel氏による研究論文「Valuing Growth Stocks: Revisiting the Nifty Fifty」をもとに見てみましょう。
この論文は、高成長・高PER銘柄は昨今のような相場環境(高インフレ、高金利)では半永久的に株価が崩れると警鐘を鳴らしているのではありません。むしろ高利益成長に裏付けられた高PER銘柄は、あとで振り返ってみれば合理的な株価形成であったことが判明しており、長期で見れば投資対象としての魅力は損なわれていませんでした。その証左として、これらNifty Fifty銘柄を仮に1972年末の最高値で全50銘柄を等分ウェイトで投資していたとしても、1998年までの長期運用成績はS&P500指数と大差はなかったのです。

<1972年12月~1998年8月>
S&P500指数:年平均騰落率 12.7%の上昇
Nifty Fifty銘柄ポートフォリオ(定期的リバランス型):同 12.5%の上昇
Nifty Fifty銘柄ポートフォリオ(単純保有型):同 12.2%の上昇

また、今日誰もが知っている下記の銘柄は1972年末の相場ピークでS&P500指数に対して割高なPERがつけられていましたが、最終的には利益成長率がS&P500指数を超え、株価上昇率もS&P500指数を上回ったのです。株式投資で成功するためには時としてかなり長期的な忍耐力が試されますが、なかなか興味深い事実です。
出所:AII Journal /October 1998 「Valuing Growth Stocks : Revisiting The Nifty Fifty」
この検証結果から分かるのは、株式市場がこれらの銘柄に対して高いPERをつけていたのは、将来的にS&P500指数を上回る利益成長が期待できることを的確に予想していたとも言えることです。一部の銘柄は当時割高と思われていたPERが、むしろ割安であったケースもあります。例えば、Coca-Cola社は当時PER46倍と、S&P500指数に比べてとても割高にみえましたが、1998年時点で振り返ってみると、同社株を1972年当時に仮にPER80倍程度で購入したとしても、その後S&P500指数並みのリターンが得られたということです。これらの優良企業の株価が相場全体につられて大幅に下落したあと、そこからの回復による株価上昇余地が非常に大きかったのは言うまでもありません。
当ファンドでは日本株投資についても、昨今のグロース株からバリュー株へのトレンド変化にあわてることなく、正しい成長株を選択することで今後も長期的に良好な運用成績が期待できると考えています。

スパークス・新・国際優良日本株ファンド | SPARX Asset Management

 

■少しずつ落ち着きを取り戻す株式市場― スパークス・プレミアム・日本超小型株式ファンド(愛称:価値発掘)

他国に遅れて日本でも、エネルギー価格に加えて一般消費材の値上げ発表が連日メディアで取り上げられており、ウクライナ情勢とも合わせ、消費マインドの悪化が懸念されます。企業の業績発表も上海のロックダウンの影響や部品不足などもあり、当初期待していたコロナ禍からの経済正常化による業績急回復という期待が剥落しております。しかしながら、上海でのロックダウン解除が発表され、外国人の入国規制の緩和などの明るい材料も出始めています。行動制限の反動による経済の活発化は確実に進んでいると思われ、過度に悲観する必要はないと考えています。株式市場も少しずつ落ち着きを取り戻しており、割安になった日本株へ投資しようとする意欲は国内外の投資家から高まっていると考えます。企業業績においても価格転嫁が進み始めており、最悪局面は越えつつあると考えます。
運用方針としましては、引き続き大きく下落した銘柄の中から、成長余地が高く割高感の低い銘柄の投資を進めてまいります。また、地政学的リスクが高まる中で、生産拠点の再配置が検討されており、その恩恵を受ける可能性の高い企業への投資も検討してまいります。

スパークス・プレミアム・日本超小型株式ファンド | SPARX Asset Management

 

■アジア株式市場への見方― スパークス・新・国際優良アジア株ファンド(愛称:アジア厳選投資)

アジア株式市場では、過去数ヵ月の間にグロース株からバリュー株への大規模な入れ替えが進んでいます。物価の上昇は需要の回復、供給網の寸断、地政学的リスクに起因しており、利上げの効果が浸透するまで比較的高水準を維持する見込みです。投資家は新たな情報を目にする度に予想を一新するものなので、それまでの間は市場のボラティリティが高まるでしょう。
ただし、市場が過去数ヵ月にわたって調整していることを踏まえると、そうしたリスク要因の多くは既に認識され、市場に織り込まれていると、当ファンドは考えます。前述したマクロ経済への圧力が多少なりとも緩和すれば、それが転換点となる可能性があります。上海で経済活動が再開したことで、消費支出が上向き、輸出入業者の活動が回復すれば供給の途絶も解消されるでしょう。中国政府はニューエコノミー関連企業に対する厳格な規制を撤廃する姿勢を見せています。さらに自動車セクター、中小企業融資、インフラプロジェクトに的を絞って刺激策を実施すると発表しています。
当ファンドは引き続き、コロナ禍が収束すれば、インドとASEAN諸国の経済、とりわけ小売業、観光業、金融サービス業が力強く回復すると予想しています。インドとASEAN諸国は、それ以外にもサプライチェーン多角化(製造拠点を中国から他地域へと移転する動き)の恩恵を受け、長期的な対外直接投資(FDI)の受け入れが拡大する見込みです。
過去の月次報告書でもご説明した通り、当ファンドはマクロ要因を予測するのではなく、ファンダメンタルズに基づいたボトムアップ・リサーチによって銘柄を選定する手法を採用しています。長期的にみると、利益成長、業界の潜在性、経営陣の能力といったファンダメンタル的な要素が、次なる優良銘柄を見極めるための主要指標になると思われます。当ファンドは引き続き、アジアにおける優れた投資機会はテクノロジー、消費、金融、インフラといったセクターにあるとみています。

スパークス・新・国際優良アジア株ファンド | SPARX Asset Management

 

■人々の交流を活性化する事業に注目― スパークス・ジャパン・オープン(愛称:キョウソウの架け橋)

具体的な調査分野として人々の交流を活性化する事業に注目します。人は他者と交流することで新しいアイデアを生み、それが社会を発展させるイノベーションにつながります。また、文化を超えて交流することが異文化の理解につながり、間接的に紛争を抑止する力になると考えます。 
人々の交流に役立つ事業として挙げられるものの一つが旅行、スポーツ、ゲームなどのエンターテインメント領域です。この中でも特にビデオゲームについては技術進化によって産業構造の変化が起こりうると考えていることから、当ファンドでは時間をかけて調査を行う方針です。 
ビデオゲームを取り巻く構造変化として特に重要と思われるのが「メタバース」関連事業の発展です。メタバースは三次元仮想空間におけるコミュニケーションプラットフォームを説明するために使われることが増えてきた用語です。既存のオンラインゲームはメタバースの一つであるため、技術自体はすでに実用化されていると言えます。その上で注目すべきであるという理由は、その利用目的が変化し始めているからです。娯楽のツールとして使われていたメタバースですが、昨今はビジネスシーンや個人間のコミュニケーションに活用される動きが出始めています。仮にこの流れが続いていけばメタバースの位置付けが娯楽ツールから社会インフラへと変化する可能性があると考えています。そうなれば、ゲームメーカーが社会基盤作りにおいて活躍する場面が増えることになるため、成長の可能性もそれに付随する責任も大きく変化すると考えます。よって、当ファンドではボトムアップ・リサーチを通じて関連した投資候補を探すとともに、各企業に対して社会的な責任を果たすことへの期待の声を伝える方針です。

スパークス・ジャパン・オープン | SPARX Asset Management

 こちらのファンドも同じ内容を取り上げております。
スパークス・アクティブ・ジャパン(愛称:キョウソウのバトン)↓
スパークス・ジャパン・オープン | SPARX Asset Management

 

■投資先企業紹介

産業資材・自動車ホイールメーカー「前田工繊」 ― スパークス・M&S・ジャパン・ファンド(愛称:華咲く中小型)

当ファンドの保有銘柄にも、一時的な業績悪化により株価が下落している銘柄がありますが、調査を経て高い業績成長の確度を維持できると判断した銘柄については、投資の好機と捉え積極的に買い増しを行っています。上位保有銘柄の前田工繊はその一例です。
同社は産業資材と自動車ホイールを中心に事業展開を行っている企業です。当ファンドでは、産業資材領域において、自然災害リスクの増大や老朽化インフラ向けに土木資材需要が増加するだけでなく、農林水産やエネルギー分野でも資材の利用拡大が見込まれること、自動車ホイール領域では自動車のハイエンド化や軽量化ニーズ増大を背景に、同社が手掛ける鍛造ホイールの需要拡大が見込まれることから、両事業の成長を期待し投資を行っています。
一方、同社の株価は昨年末の高値から約4割低い水準にあります。発表された直近の2022年6月期第2四半期決算(今期は9か月の変則決算)では、粗利率が前年同期の36.3%に対し33.2%まで低下しました。要因として、自動車生産が部材不足や中国のロックダウンの影響から低迷していることでホイールの生産数量が伸び悩んでいること、また資材費高騰に対し価格転嫁が遅れた結果利益率悪化に見舞われていることなどが挙げられます。株価下落を踏まえると、市場参加者は同社の収益性悪化が今後も続くとの懸念を持っていると考えられます。しかし当ファンドでは調査活動を通じこれらはあくまで一時的な要因に留まると考えられること、また設備投資効果が見込まれる2023年以降は新市場向け商品群の業績貢献が見込まれることを踏まえ、買い増しの好機と捉えています。
特に業績貢献が大きいと期待するのは、自動車ホイールのアフターマーケット(自動車購入後の交換用途など、以下「AM」)です。同社自動車ホイール事業はBBSジャパン㈱を2013年に買収しスタートしましたが、買収当時は会社更生法が適用されていたこともあり、業績立て直しのため、売上規模を確保できる自動車OEM(Original Equipment Manufacture、他社ブランドの製品を受注製造すること。)向け事業(主に自動車メーカーの新車用途)に経営リソースが割かれる状況が続いていました。その後売上が増加し経営環境が安定してきたことで、同社は改めてAMへの注力を計画しています。OEM向けとAMの最大の違いは価格です。継続的な価格引き下げ圧力を受け続けるOEM向けに対し、AMでは同社が販売価格を自由に設定できるため非常に高い利益率を得ることができます。現状OEM向け売上は全体の8割を占めますが、今後低採算のOEM向けをモデルチェンジのタイミングでAM向け製品に切り替えを進めていくと見られます。このため収益性の高い製品比率が上昇することにより、自動車ホイール事業の利益率上昇が可能と当ファンドでは考えています。
以上の理由から、自動車ホイール事業では生産が回復する夏場以降、数量増と売上構成比率改善による10%台後半の利益成長が見込まれるほか、産業資材分野では資材の用途拡大によって8%前後の需要拡大が今後も続くと考えられます。現状の株価は短期的な業績悪化を織り込んで下落しており、株価の再評価余地は大きいと当ファンドでは考えています。

スパークス・M&S・ジャパン・ファンド | SPARX Asset Management

 

家庭用ガス機器メーカー「リンナイ」― スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド(愛称:ベスト・アルファ)

当月は、4月以降に新規投資を開始した「リンナイ」についてご紹介します。
同社は家庭用ガス機器の国内トップ企業です。付加価値の高い製品の開発、原料から一貫生産する内製へのこだわりなどから、収益性で競合他社に大きく差をつけています。また、古くから海外に進出しており、営業利益の50%程度を海外で稼ぐグローバル企業の一面もあります。当ファンドでは、同社の海外事業の成長がこれから加速すると考えており、短期的に業績が低迷している今を好機と捉え、投資を開始しました。
同社の足元の業績は低調であり、株価は軟調に推移しています。低調な業績の背景は、部材の調達難による減産と原材料価格の高騰です。部材の調達難については、半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大による海外のロックダウンの影響を受けた仕入れ先の生産停止などが、原材料価格の高騰については銅や鉄鋼などの値上がりが痛手になっています。しかし、同社への取材を通じて、部材の調達難は既に最悪期を脱していること、また、製品価格の引き上げを16年ぶりに打ち出すことで、原料高にも対応できていると当ファンドは考えています。同社はガス器具というライフラインに関わる製品を供給する国内のリーダー的存在であるため、値上げは比較的スムーズに行われるものと分析しています。2022年3月期の上期については低調な業績が続きますが、下期以降は収益性改善が期待できます。
中長期的には海外事業、とりわけ米国の成長に着目しています。米国の給湯器はタンクにお湯を貯める貯湯式が主流ですが、湯切れしないことと省エネ性能から日本と同様の瞬間式に需要がシフトしつつあります。これまで価格差が普及のボトルネックになっていましたが、徐々に縮まってきていることから、成長加速が期待できます。米国における瞬間式給湯器では、同社と韓国の慶東ナビエン(キュンドンナビエン)社がトップを競っています。両社ともに市場拡大の恩恵を受けますが、品質の差から長期的にはリンナイが優位に立つと当ファンドは考えています。

スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド | SPARX Asset Management

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スパークス・日本株・L&S | SPARX Asset Management

 

中堅不動産企業「トーセイ」 ― スパークス・少数精鋭・日本株ファンド

当月は、当ファンドの組入銘柄「トーセイ」について、投資の魅力についてご説明します。
トーセイは、1950年創業の中堅不動産企業です。現在の山口社長の父が創業者ですが、山口社長が就任してから本格的に業容拡大したので、山口社長が実質的創業者と言っても過言ではありません。事業内容は、マンション・戸建・オフィス開発、中古物件の転売、不動産賃貸、ホテル運営、不動産ファンド運営など、総合的に不動産業を展開しています。
コロナ禍以降、日本の株式市場では不動産セクターが嫌われているように思われます。新型コロナウイルス感染拡大を受けた在宅勤務・リモートワークの普及や、訪日客の入国制限によるホテル業界の苦戦から、不動産市況に強気になれないのが背景にあります。その中でも、同社のような中規模な不動産企業は、低位な株価のまま推移してきました。
一方、当ファンドでは、トーセイの規律ある事業展開、および不動産ファンド事業の拡大を評価し投資しています。規律ある事業展開とは、仕入れに現れています。現在のように不動産価格が高止まりしている場合、不動産企業は開発、転売での利益を出しにくい状況です。不動産ディベロッパーにとっては、土地の価格が高すぎて不動産開発を進めにくい環境であり、トーセイにとっても難しい状況です。しかし、トーセイは「高値で不動産を買わない」という規律を維持しながら、独自の視点で仕入れを行い、安定した成長を達成しています。独自の視点とは、手間と時間がかかる、つまりライバルがやりたがらない案件を手掛けていることです。具体的には、不動産を持つ零細企業を、オーナー合意の上で買収し、事業を売却、残った不動産を開発するなどです。トーセイは、権利処理に時間がかかる案件を好んで進めることで、安く不動産を仕入れることが出来ています。
また、同社の不動産ファンドの残高は2018年11月期の6,633億円から2022年11月期第1四半期の1兆5,092億円まで急激に拡大しています。残高増加の多くは外国人投資家による日本の不動産投資によるものと当ファンドでは推測しています。日本の不動産のイールドギャップ(利回りと長期金利の差)は主要先進国の中では高位にあり、引き続き投資妙味が高いと言えます。結果、同社の収益は、従来の物件売買によるフロー利益から、ストック型利益の比率が上がっていくと当ファンドは考えます。またトーセイは、拡大した不動産ファンドを、自社の開発物件の売却先と考えることができる状況となっています。収益構造が変化しているにも関わらず、株価指標はフローを中心とした事業モデルのまま評価されているようです。2022年11月期実績で、PBR(株価純資産倍率)は0.83倍であり、今後の利益成長の持続性に対し、株価は割安であると当ファンドでは考えています。

スパークス・少数精鋭・日本株ファンド | SPARX Asset Management

 

オフィス機器および建築工具等産業機器メーカー「マックス」 ― スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド(愛称:対話の力)
当月は、当ファンドの投資先である「マックス」について、投資見解と対話内容をご説明します。
ホッチキス等のオフィス機器および建築工具等の産業機器メーカーであるマックスは、1942年に群馬県高崎市で航空機部品メーカーとして創業しました。航空機部品の製造で培われたプレス技術や線材加工技術を活かし、戦後、国産初となるホッチキスの量産を実現しています。1985年には複写機・複合機に内蔵される電子ホッチキス「オートステープラ」を発売しました。オートステープラは、圧倒的な品質・精度の高さから、世界のほぼすべての複写機メーカーに採用されており、世界シェア9割を誇ります。
(中略)高い技術力に裏づけられた同社の独創性と潜在成長力は、未だ同社株価に十分に反映されていないと当ファンドは見ています。当ファンドは、同社の実態価値と現在の株価の差(バリュー・ギャップ)を解消するために、主に以下2つの課題への対処が必要と考えます。
一点目は、低い資本収益性の改善です。同社の2022年3月期連結営業利益率は10.1%、資本収益性を測る指標であるROE(株主資本利益率)は7.5%に留まります。グローバルで高シェアを誇るオートステープラや鉄筋結束機は、機器が使用され続けるかぎり専用消耗品(オートステープラはホッチキス針、鉄筋結束機はワイヤー)が売れ続けるビジネスであることから、消耗品も含めた収益性は20%台半ばと推定され、本来であれば同社の営業利益率ならびにROEはもっと高くてしかるべきと当ファンドは考えます。全社ベースの利益率を押し下げる要因として、既存の建築工具やオフィス機器の中にも十分な利益が出ていない製品があると思われるほか、浴室乾燥機やシニア向け車いすなど、かつて同社が買収した低収益の非コア事業があります。これらの事業を継続することの妥当性について、今後、十分な検証が必要と当ファンドは考えます。
(中略)二点目は、同社株式の流動性の改善です。同社は700億円超の時価総額を誇る東証プライム市場の上場企業ですが、機関投資家が同社に投資する上で、その著しく低い株式流動性が障害になっています。同社の成長に期待する投資家がまとまった資金を投じて株を買いたくとも、円滑に買えない状況があります。誰かが新たに株を買わなければ、株価上昇は望めません。また当ファンドは、配当のみならず自社株買いも活用することが、長期株主にとってより好ましい株主還元方法であると考えますが、流動性が著しく低いことが、市場での自社株買いも難しくさせています。
同社株式の流動性が低い主な理由は、主要株主のうち、政策保有株式を保有する金融機関や事業会社が多くを占めることです(上位株主10社に含まれる政策保有株主の持分が発行済株式総数に占める割合は、2022年5月27日現在で約43%)。政策保有目的で株式を保有する金融機関や事業会社は、株式保有のために投下した資本から保有コスト(資本コスト)を上回るリターンを得ることを必ずしも一義的な目的としていないため、保有される株は売買されることのないまま長年、塩漬けにされている状態と思われます。このような株主は経営にモノ申すこともなく、経営陣にとっては心地良い存在かもしれませんしかし、このような株主の存在が流動性を低下させ、株価が適切に同社の実態価値を反映して上昇することを妨げているとすれば、彼らは他の株主の利益を損なっている、すなわち少数株主との間で利益相反の状態にあると言えると当ファンドは考えます。あるべき株価上昇を実現するために、経営陣が大株主に働きかけて株式の一部売却を促し、その一部を自社株買いすることが適切であると当ファンドは考えます。長期的成長を支えるリスクマネーの拠出者である株主と経営が利害を共有し、共に発展していくために、「健全な株主構成の構築」に積極的に取り組むことも、企業経営者ならびに取締役会の重要な責務の一つであると考えます。
当ファンドは、当月に同社取締役と面談し、改めてこれら課題への積極的な対応を期待していることを伝えました。同社によれば、製品ポートフォリオ見直しの必要性は社内でも議論されており、資本収益性の改善は、引き続き重要な経営課題の一つと認識しているとのことです。今年発表された配当方針の見直しは、本格的なROE改善に向けた第一歩であると当ファンドは理解しており、経営陣が課題への対処に真剣に着手しはじめたことは、同社に対して長期に投資したいと考える投資家にとって心強い流れであると考えます。当ファンドは、引き続き同社の資本収益性の改善を後押しすると共に、株式流動性の問題についても経営陣と意見交換を行い、より具体的な対処を後押ししていく方針です。

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光学電子部品メーカー「LG Innotek」 ― スパークス・韓国株ファンド(愛称:韓国厳選投資)

当月は、当ファンド組⼊銘柄の「LG Innotek」についてご紹介します。
同社はApple社(米国)のiPhone用カメラモジュールの主要ベンダーです。そのため、同社の収益と株価はApple社のスマートフォン出荷台数と高い連動性を有しています。iPhone12の販売台数が世界で1億台を超えたことから、2021年はLG Innotekの利益が大幅に増加しました。同社のカメラモジュール事業である光学ソリューション部門の売上高は1.15兆ウォンを記録し(約1,196億円、総収益の約77%)、営業利益にも同程度貢献しました。しかし、iPhone事業への依存度が高く、景気循環に左右されやすいことから、株価収益率(PER)は6~8倍程度に留まっています。
営業利益率が低く、Apple社に対する交渉力がないことから、当ファンドはかねてから同社の主力事業を高く評価することは困難であると考えていました。しかし、スマートフォン市場におけるApple社の優位性が高まっていること、それに加えて、後述の通り、同社の中長期的な事業戦略や業界でのポジショニングが優れていることを考慮し、従来の想定を変更しました。
Apple社のiPhone売上高は2022年に過去最高を記録する見込みです。2022年3月に発売された低中価格帯スマートフォンは、値ごろ感のある5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンとして普及すると予想されています。また、今年下期に発売予定のスマートフォンでは、カメラの性能が大幅に改善する予定です。
Apple社やMeta社(米国)といった世界的IT企業は、近日中にXR(Extended Reality、現実世界と仮想世界を融合する技術の総称)技術を利用した情報端末を発売する予定です。カメラや3Dモジュールに対する需要の増加は、同社の光学ソリューション事業にとって追い風となります。さらに、カメラは自動運転車の主要部品でもあります。同社は3Dモジュール業界でもリーディングカンパニーの1社であり、既に世界の主要自動車メーカーと提携関係にあります。
当ファンドの組入銘柄のファンダメンタルズは、依然として損なわれていないと当ファンドは考えていますが、今後も慎重に注視し、投資目的との整合性を保っていく方針です。当ファンドは、韓国における事業の魅力と構造改革だけを原動力に持続的かつ長期的な成長を遂げると考えられる銘柄を厳選し、ポートフォリオを構築してまいります。

スパークス・韓国株ファンド | SPARX Asset Management

 

 

以上、2022年5月の月次レポートをまとめてみました。どれも盛りだくさんの内容となっておりますので、是非リンクの各投資信託のページへ飛んでいただき、全文をご覧ください!

 

※こちらは2022年5月末のマンスリーレポートをもとに再編集しております。内容はチームメンバーの見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。また、記事にある企業名等の内容は参考情報であり、特定の有価証券等の取引を勧誘してはいない点もご理解いただけますよう、お願いいたします。

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