カーボンニュートラルとスタートアップ~未来創生ファンドができること~
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カーボンニュートラルとスタートアップ~未来創生ファンドができること~

皆様こんにちは。スパークスで国内外の非上場スタートアップ企業に投資している「未来創生ファンド」次世代成長投資本部の山崎です。

最近ニュースでも雑誌でも、「カーボンニュートラル」という言葉を目にしない日はありません。地球温暖化という重要な社会課題に関連したこの取り組みは、未来創生ファンドでも非常に注目している投資領域であり、今後3000兆円(!)の世界的な資金が動くとも言われています。

今回は、未来創生ファンドが、この重要な社会課題を解決したいという強い志を持った起業家とそれを支えるパートナーの皆様と共に、いかに持続可能で豊かな未来の世界づくりに貢献していくかをお伝えしたいと思います。

「カーボンニュートラル」とは?

そもそも「カーボンニュートラル」という言葉は聞いたことはあるけど、実は何のことなのかあまり分かっていないという方もいらっしゃるかと思います。

カーボンニュートラルを直訳すると「炭素中立」という意味になります。つまり、大気中の二酸化炭素の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにしようという取組みです。

そのために重要となるのがまさに最新の技術であり、どのような技術かというと、①二酸化炭素を排出させない技術はもちろんのこと、近年では特に、②発生した二酸化炭素を回収する技術、③回収した二酸化炭素を積極的に利用する技術に注目が集まっています。

このため、このような革新的な技術を研究開発しているスタートアップへの積極な投資が今後非常に重要になり、ますますそれらの企業の価値が高まっていくと予想されます。

「カーボンニュートラル」が注目されている背景とは?

では、なぜ今ここまで注目されているのでしょうか。一言でいうと、地球温暖化を防止するためです。

特にここ数年で多発している異常気象から考えると、地球温暖化の防止は急務であることが自明です。
異常気象による経済損失に着目してみると、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)の報告によれば、1998年から2017年の約20年間で被った経済損失は約252兆円と言われていて、これは1978年から1997年の約20年間の100兆円規模と比較すると、約2.5倍も増加していることになります。

このまま地球温暖化対策を講じなければ、世界の平均気温は2100年頃には約4℃も上昇すると予想されています。これは経済損失だけではなく、あらゆる生命体への重大な危機です。これを解決するために、出てきた概念がまさに「カーボンニュートラル」なのです。

カーボンニュートラルが適用される場面

ひとえに「カーボンニュートラル」といっても、その取り組み自体は非常に広範囲にわたっており、様々な場面で目に触れるようになってきました。具体的には発電、輸送、身近な所ではスーパーのレジ袋に至るまで。

(1)発電
 二酸化炭素は石油や天然ガスなどの化石燃料を燃焼した際に発生します。それと同時に熱を発生します。現在、日本の多くの発電所では、その熱を発電に利用しています。二酸化炭素の排出を抑制するという観点から、発電の場合、太陽電池、風力発電および地熱発電などの比率を増やすことが足元の重要な課題となっています。

(2)輸送
再生可能電力を利用した電気自動車や再生可能エネルギーで製造した水素を使った燃料電池自動車の普及に精力的に取り組まれています。また、1970年代のオイルショックを契機に日本が培ってきた省エネルギー技術も二酸化炭素の排出を削減する大きな方策の一つです。

(3)身近な例
電気の消費量が少ない家電、家庭に設置されているエネファームなどが挙げられます。植物の光合成により、排出した二酸化炭素を回収し、再使用するというカーボンニュートラルの考えも広がっています。スーパーのレジ袋に使用されているバイオマス由来プラスチックも社会実装されつつある製品と言えます。さらには、ここ最近報道されているコンクリートに二酸化炭素を固定する新技術や二酸化炭素から酸素やプラスチックの原料に変換する人工光合成など日本の技術が世界に先んじている新技術も萌芽しつつあります。

カーボンニュートラルの課題

様々な取り組みを通してカーボンニュートラルを推し進めるにあたって、一番の課題はなんといってもコストです。

これまでは、いくら環境に良い製品が出来たと言っても、従来の化石燃料を用いる方法と比べて、例えばコストが2倍あるいは3倍など高くなってしまうと、購入されず、市場に根付きませんでした。そのため、安価な石炭、石油などの化石燃料が莫大に使用され、大気中の二酸化炭素濃度が上昇してしまいました。その結果、異常気象による経済損失、生物の多様性や森林および水資源の減少など、地球環境に大きな負荷を与えてしまったことも否めないでしょう。

一方、車両や航空機の低燃費化、すなわち省エネルギーに貢献できる新しい軽量部材が出来たとしても、その部材を製造するために、多大なエネルギーを必要とし、結果、二酸化炭素の排出量が増加することになれば、本末転倒になりかねません。

そのような観点から、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment; LCA)に基づき、原料の調達、製造、輸送、販売、使用、廃棄、そして再利用に至る各段階において環境負荷の少ない製品の開発が必須となってきます。さらには、製品が出来上がるまでのサプライチェーンの中で、不当な労働を強いてはいないか、地域社会に負荷を与えていないかなど社会問題への取り組みも求められています。

スタートアップの活躍の機会

このように経済活動と環境を両立させて、持続可能な社会を実現させるといった取り組みは、見方を変えると、これまでの業界における企業のポジショニングを大きく変えるチャンスです。まさにゲームチェンジャーとなりうる可能性を秘めています。今や巨大なグローバルとなっているGAFAM、テスラなどもここ数十年前に起業したスタートアップです。社会課題の解決のために新しい技術やビジネスモデルを創出し、自国のみならず、世界に目を向けてスピーディーにビジネスを展開しているスタートアップがこのカーボンニュートラルの領域でも勃興しています。

この点、カーボンニュートラルの分野では、コンセプトの検証(PoC; Proof of Concept)のために高温高圧の化学反応、さらには分離精製などの単位操作ができる重厚な設備が必要であるため、とかく資本が小さいスタートアップの参入の余地が少ないと思われがちです。資本力がある、一部の大企業や公的機関が技術的にも優位と思われがちですが、そんなことはありません。独自の視点でカーボンニュートラルに資する技術を開発し、社会実装に向けて邁進しているスタートアップがグローバルで多く活躍しています。

これまでの「ものつくり系」スタートアップは、大企業との熾烈な技術開発競争に打ち勝ち、自社単独で設備を建設、運営し、そこから生産されるプロダクトを販売するといった一連のサプライチェーンを構築する志向が多く見受けられました。しかし、近年、コアとなる強い技術をスタートアップが創出、志を一にする大企業と共創してビジネスをスケールさせる展開が増えています。

一例として、カーボンニュートラルにおいて注目されているCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage, CO2回収・利用・貯蔵)に取り組んでいるスタートアップを紹介します。

図. CCUSに取り組むスタートアップの事例

カーボンニュートラルを推し進める政策の追い風

さらに、イノベーションを加速させるため国家レベルでの支援も表明されています。アメリカでは電気自動車、再生可能エネルギーなどに関わる分野を中心に4年間で約210兆円の支援、欧州では10年間で約120兆円規模のグリーンディール投資、英国、韓国および中国でもそれぞれ多額のイノベーション支援に取り組む姿勢が鮮明にされています。

日本では政府が経済と環境の好循環を目指す戦略を打ち出しています。カーボンニュートラルに向けた投資促進および研究開発税制の拡充などにより民間投資を喚起、そして、炭素の排出に価格をつけて抑制するカーボンプライシングなど金融面での市場のルール作りを通じて投資を呼び込む構えです。さらには2兆円規模のグリーンイノベーション基金を設立し、イノベーションに挑戦する企業に対して10年という長期的な支援を行う計画です。

未来創生ファンドの役割

この地球温暖化という重要な社会課題を解決したいという強い志を持った起業家と、それを支えるパートナーの皆様と共に、未来創生ファンドは何ができるのでしょうか?

私たちスパークスは創業以来、投資を通じて、「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」という目標を掲げています。その中で、「これからのあたりまえを創っていく」ことをミッションとして、トヨタ自動車様、三井住友銀行様と共同でイノベーションの加速に貢献し、未来を拓く新たな力を世界に発信する「未来創生ファンド」を2015年に立ち上げました。その基本理念は、未来社会に向けた成長を牽引しうる技術を有する事業を対象に、スタートアップに出資を通じた育成を図り、イノベーションの加速に貢献すること、ファンドで発掘した企業群でポートフォリオを組むことにより、未来を拓く新たな力を見える化し、世界に発信することです。

例えば、未来創生ファンドでは水素の利活用が着目されるもっと前から、国内外で、水素社会の実現に資する技術をもつスタートアップ、あるいはプロジェクトを探し求めてグローバルな投資を行ってきました。「電動化」という領域でも同様です。さらにいうと、スパークスでは、未来創生ファンドがこれらに取り組む前から、2012年に東京都が企画した官民連携インフラファンドの運営事業者として選定された実績があります。(2013年1月の第1号投資案件を皮切りに、今に至るまで、日本全国で太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー発電事業への投資を進めています。)
そして、スパークスでは1989年の創業以来、投資の中でESG(Environment, Social, Governance)の考えを実践しており、2018年には責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)に署名するなど、明確にESGに対して取り組む姿勢をいち早く表明してきました。

このように、スパークスは水素、電動化、さらには再生可能エネルギー分野における技術知見もさることながら、事業運営の面でも非常に多くのナレッジやアセットがあります。また、未来創生ファンドには、LP(Limited Partner; 有限責任組合員)としてご参画頂いている事業会社および金融会社、仲間である他のファンド、さらには金融支援をご希望されているスタートアップからの貴重な情報がたくさん寄せられており、選りすぐられた情報をもとに投資活動ができるアドバンテージを有しています。

そして、社会課題を解決したいという強い志を持った起業家と、それを支援するパートナーの皆様と共に新産業の創出に携わり、持続可能で豊かな未来の世界つくりに貢献することが我々未来創生ファンドのメンバーの想いです。
是非、未来創生ファンドと共に未来を切り拓くパートナーおよびスタートアップをお待ちしております。


※内容は個人の見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。また、記事にある企業名等の内容は参考情報であり、特定の有価証券等の取引を勧誘してはいない点もご理解いただけますよう、お願いいたします。

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独立系投資会社スパークス・アセット・マネジメントの公式noteです。 「もっといい投資をしよう!」を合言葉に、投資への思いを語る場にしたいと思います。