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投資家と企業の対話における最適な密度とは?

みなさん、こんにちは。スパークスのサステナブル投資チームです。

ビジネスの世界で「エンゲージメント」というコンセプトが重要になってきています。投資の世界も然りです。ここでは投資家と企業の間の関係を強化していくという文脈でエンゲージメントという言葉がよく使われます。

顧客と企業の関係においては、エンゲージメントは密度が濃い方がいいという考えが一般的でしょう。では、投資家と企業の間のエンゲージメントはどうでしょう?

今回は投資家と企業の対話における最適な密度について、不二製油についての事例を見ながら、考えたいと思います。

※こちらはサステナブル投資チームによる2020年10月末のマンスリーレポートをもとに再編集しております。内容はその時点でのチームメンバーの見解を元に書いているため、現時点でのチームメンバーの見解、またはスパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。また、記事にある企業名等の内容はその時点での参考情報であり、特定の有価証券等の取引を勧誘してはいない点もご理解いただけますよう、お願いいたします。

背景

不二製油グループ本社は、1950年に伊藤忠商事㈱の全額出資で大豆の搾油をする「不二製油」として設立されました。その後、 1961年の株式上場により経営の独立性を高め、2015年の持ち株会社化を経て現在のグループ体制にいたっています。

事業面では食用油事業を発展させてチョコレート油脂事業に進出し、更に製菓・製パン業界向けに業務用のチョコレートを提供する形へとビジネスモデルの高付加価値化を進めました。また、大豆を活用したビジネスも取り組んでおり、環境負荷の少ないタンパク源として植物性タンパク質の研究開発に取り組んでいます。

当戦略が不二製油グループ本社への投資を検討したのは、上記のような高付加価値化戦略への期待に加えて、ESGへの取り組みが積極的になったことに着目したからです。

ESGへの取り組みが積極化

同社のESG活動において当戦略が重要視したポイントは二点です。

一つ目のポイントは原料調達におけるリスク管理です。
同社は油脂原料としてパーム油を使っていますが、パーム油は森林保護や労働条件の点で管理が難しいという課題をかかえています。この点について同社は負の側面を軽減するためにRSPO認証という持続可能なパーム油認証の取得を進めています。
また、最近ではマレーシアでの合弁会社において、栽培プランテーション、搾油工場、製油のそれぞれの事業者を1社に絞ることでサプライチェーン管理の高度化を実現しており、先進事例として顧客からも評価されています。

二つ目のポイントは、気候変動対策を意識したPBFS(Plant Based Food Solution:植物性由来食品ソリューション)の展開です。動物性タンパク質にくらべてエネルギー効率が高く温暖化ガスの排出量も少ない植物性タンパク質を広めて地球環境に貢献するというのがPBFSの事業コンセプトです。特に同社は豆乳のおいしさや機能を高めるUSS製法という先進的な加工技術を開発して特許を取得するなどの成果をあげています。

難しいESG課題の改善に取り組みながら成長を目指す姿勢を評価して、当戦略では2017年に不二製油グループ本社への投資を開始しました。

経営状況の変化と、対話の継続

しかし、その後2019年に行った米国企業のブラマー社の買収により、不二製油グループ本社の経営状況は変化しました。
買収により成長の可能性が高まりましたが、その一方でカカオ豆調達部門を取りこんだことによるサプライチェーン管理や買収資金調達による財務バランスの悪化など、対処すべきリスクも格段に高まりました。そして、そのリスクに対応するために筆頭株主である伊藤忠商事㈱の関与が強まるというガバナンス上の課題も発生しました。
経営状況が先行き不透明になったこと受けて、当戦略では同社株への見方を修正し保有ウエイトを引き下げました。

ウエイトは引き下げましたが、先行き不透明感の要因となったリスクの低下やガバナンス課題が改善すれば再度株価の上昇余地があるという考えのもと、保有を継続したうえで直接の対話を通じて懸念や改善案を伝えるという「エンゲージメント」を継続して行っています。

最近おこなった同社とのミーティングにおいては、上記のサプライチェーン管理とカバナンス課題の二点について重点的に対話を行いました。当戦略からは①原料調達の上流部分を手離してリスクを低減し、②チョコレート事業に特化することで高付加価値化を推し進め、③稼いだキャッシュを元手にPBFSの開発に専念するという事業ポートフォリオを伝えました。同社側からは「参考になった」というフィードバックがなされたことから、当戦略は引き続き同社の今後の改善施策を注視していく方針です。

対話における最適な密度を考える

なお、当戦略ではこのような改善案についての対話をする場合に、それをアイデアとして提示することにとどめ、具体的な戦略策定など実行段階への関与は行っていません。

その理由は、一つには戦略の具体策については外部の当戦略が意見するより、企業の内部で議論を重ねることの方が総合的にみて合理的になる可能性が高いと考えるからです。
もう一つの理由は、投資先の経営に深入りしすぎるとインサイダー情報に触れるリスクが高まるためです。インサイダー情報を保有すること自体は悪いことではありませんが、情報を取得すると当該株式の売買ができなくなり、流動性(株式売買の自由度)が犠牲になってしまいます。インサイダー情報を取得しなければ、経営改善が確認できた段階でさらなる株の買い増しもできますし、逆に対話の甲斐なく企業の改善がすすまない場合は保有株を売却することでファンド資産を守るという手段が残されることになります。

このように投資家と企業の対話における最適な密度を保つことも託されている資産を守るために、気を付けていることの1つです。

スパークスのサステナブル投資戦略は日本版スチュワードシップ・コードや国連が支援するPRI(責任投資原則)の考え方に準拠し、良質なパフォーマンスを追求すると同時に、よりよい社会を構築する一助となるべく企業との対話を行い、優れた投資先企業を選別した上で株主として支えてまいります。

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独立系投資会社スパークス・アセット・マネジメントの公式noteです。 「もっといい投資をしよう!」を合言葉に、投資への思いを語る場にしたいと思います。