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バブル絶頂期には見向きもされなかった!? 中小型株投資から生まれたボトムアップ・リサーチ

1989年、当時の日本はバブル絶頂期。ソニーや東芝などの大企業が現在の米FANGM、つまりFacebookやAppleのような存在で、世界中の投資家が日本企業に熱狂的に投資していた。一時は皇居の不動産価値が、米カリフォルニア州全体の不動産価値と同じ(!)になったとも言われていた。

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中小型株投資のはじまり

そんな1989年7月、スパークスは創業した。
当時はもちろん運用成績も資本も全く無い。あったのは投資アイデアと情熱だけ。情熱と共に提供した投資仮説は、
「日本は変わる。戦後の官僚をピラミッドの頂点とした成長モデルから消費者・市場を頂点とした成長モデルへ。」

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社長の阿部は日本経済に大規模な構造変革が起きることを想定していた。
そして、その変革の担い手は大企業ではなく、店頭・中小型企業に代表される新興の成長企業であると訴えた。新興の成長企業は政府や官僚による保護または規制から受ける影響が相対的に小さく、これらの企業の中から次世代の成長企業が現れると考えていたからだ。

しかし、資本も運用成績もない新興の運用会社が運用資金を獲得できるほど甘くはない。国内では相手にされず、社長の阿部は世界中の投資家のドアをノックした。そしてついに中東の政府系ファンドが最初の顧客となり、スパークスは日本株の中小型ブティックとして、中小型株投資戦略とともにはじまった。

そして、バブルの絶頂期にあえて多くの人が見向きもしなかった中小型株に注目したことが、今にも続くその後のスパークスの投資アプローチを決定づけていったのだ。

情報がないからこその「生の声」

当時、中小型株式を専門とし、ボトムアップ・リサーチを徹底している運用会社はほとんどなく、各企業への直接的なリサーチ・アプローチを持つ運用会社もごく少数に限られていた。現在でこそ企業の開示情報は充実してきており、財務情報やニュースなど気軽に確認ができるが、当時はそのようなことはない。中小型企業であればなおさらだった。

考えてみてほしい。ソニーや東芝などの大企業が現在の米FANGM、つまりFacebookやアップルのような存在だったのだ。誰でも知っている日本の大企業の株が、調査しなくてもどんどん上がるような状況に、誰がわざわざ誰も見ていない、星の数ほどもある中小型株を直接調査して、投資しようと思うだろうか?

そんな中、スパークスでは自らが実際に各企業に赴き経営陣と直接対話を行い、企業の実態をより深く理解することを重視するようになった。
これは中小型企業は大企業と比較し、マネジメントの影響力が強い場合が多く、経営陣に直接アプローチしないと企業の実態の把握ができないという認識からだ。

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経営陣の「生の声」を聞くことを通じて確認できる経営哲学、企業の現場でのみ体感できる成長企業の胎動を確認することで、単なる文字や数字の羅列に過ぎない公開情報の奥に潜む真の企業像を浮き彫りにできると考えたのである。

そして確立されたボトムアップ・リサーチと投資手法

このような背景とともに確立されていったボトムアップ・リサーチでは、主に「企業収益の質」「市場成長性」「経営戦略」の3つの観点から調査を行う。

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「企業収益の質」:企業がどのように売上を上げ、コストがどのくらいかかり、その結果、利益がどのように生み出されるのか、という非常に基本的なビジネスモデルを理解する。

「市場成長性」:その企業が行っているビジネスが成長市場にあるかどうか。市場自体が拡大していたり、アジアなどの成長市場に進出していれば、それだけで単純にビジネスする上で優位性があるといえる。

「経営戦略」:意思決定を正しく合理的に実行することができる経営者かどうか。ビジネスモデルをつくるのも、海外に進出するのも、すべて経営者の意思決定であり、資本効率(ROE)を高めるため、利益を次の成長のために内部留保するのか、配当や自社株買いをして株主還元するのかを決めるのも経営者の重要な仕事。企業評価をする上で最も重要なポイントと言える。

この3要素を財務情報、非財務情報、周辺情報など、ありとあらゆる要素を織り交ぜながら分析し、企業の実態価値を算定する。

対象企業の時価総額とスパークスが算出した実態価値を比較して、実態価値よりも時価総額が安く放置されている企業が投資対象となるわけだが、これだけでは十分な条件とならない。いくら安く放置されていても、市場がその価値に気が付かない限り、株価は上がらないからだ。いわゆる「バリュー・トラップ」というものだ。
なぜ安いのかを考え、既に起こった事実にしっかり目をやって、株価が上がる、価値と価格の差が解消されるきっかけ(カタリスト)があるという結論に至ったら、初めてそこで株を買い、投資の判断を下している。

屋台骨となり、現在も進化を続ける中小型戦略

スパークスでは、このようなリサーチ・投資手法を会社全体として共有化している。既存のプロセスに甘んじることなく、チャレンジしつづける風土を守り、革新的な投資戦略を生み出し続けられるよう、日々研鑽してきたことで、現在スパークスには様々な資産クラス、投資戦略があるが、中小型戦略は現在の運用調査力の屋台骨になっているともいえるだろう。

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その後、スパークスの最初の顧客は自国での戦争を機に海外投資を引き上げたが、米国金融機関の日本小型株ファンドの運用、国内証券会社の店頭株ファンドなど、様々な投資家に投資仮説とアイデアを採用いただき、スパークス日本株式中小型投資戦略は今でも世界中の投資家を顧客に、よりよいリターンを提供できるよう、日々絶え間なく改善を続けている。

スパークスの日本株式中小型投資戦略のファンドのひとつ、「スパークス・M&S・ジャパン・ファンド(華咲く中小型)」の今月(2020年11月)の月報では、ファンドマネジャーが現時点での目指すビジョンについて語っているので、ぜひご覧いただきたい。

https://www.sparx.co.jp/mutual/uploads/pdf/hana.pdf


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今回は、1989年の創業当時からつづいている日本株式中小型投資戦略について、当時のエピソードとともにnote編集チームでまとめてみました。
このように中小型戦略はスパークスの礎となっており、スパークスを語るうえで外せない戦略です。激動のバブル期からはじまり、日々研鑽を続ける中小型戦略に今後も注目いただけますと幸いです!

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