コロナ禍の今何が起き、今後何が起こる?投資家として考える、「日本株のメガトレンド」
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

コロナ禍の今何が起き、今後何が起こる?投資家として考える、「日本株のメガトレンド」

新型コロナウイルスの本格的な感染拡大から約1年半が経ちました。なかなか出口の見えない日々に、苦しい思いを抱えている方も多いと思います。

しかし、皆さんもご承知のように、人類の歴史はウイルスとの戦いの連続でした。時に大きな犠牲を払いながらも、私たちの祖先は常にウイルスとの戦いに勝利してきたのです。新型コロナとの戦いも私たちが勝利して、日常生活の新たな新常態の中で、新しい世界を創っていくプロセスが始まると思います。

だからこそ今、目の前の問題に翻弄される事なく、コロナ禍で何が起きているのか、今後何が起きるのか、新しい世界の形をしっかりイメージして、投資家として次の飛躍の為に行動する時ではないでしょうか。

今回は弊社社長の阿部によるセミナーの言葉を用い、ポスト・コロナの世界を考えるにあたり3つの大きなトレンドを、皆さまにお伝えしたいと思います。最後にはよくあるご質問をQA方式でまとめていますので、是非ご覧ください。

阿部 修平 プロフィール

画像1

メガトレンド①インフレの時代~コロナ禍の今、何が起きているのか~


大きなトレンドの一つ目は、世界では、長期にわたるデフレからインフレへのトレンド転換が始まっているということです。
コロナショックは、100年に1度と言われた2008年のリーマンショックとは全く異質の危機となりました。経済は急激により深く悪化しましたが、それに世界各国の政府は果敢に対応したのです。
リーマンショックが金融危機に端を発した信用の危機で、回復に長い時間を要したのに対し、コロナショックは個人消費が短期間にかつ壊滅的に減少し、政府がそれを穴埋めしました。政治家にとって、一票の重みは同じですから、これが政治家を動かし、財政出動につながったということです。

政府が最終的に決定した財政の総額はグローバルで1200兆円にのぼり、世界経済の約10%となりました。下記は、主要国別のGDP減少額(試算)と財政支出をまとめたものです。

画像2

【米国】
・発表済みの300兆円に加えて、インフラ投資に来る4年で200兆円規模の財政投入を追加検討
・来年は中間選挙。財政規律を乗り越えて、経済成長を優先するために財政支出を拡大すると考えられる
・結果、ドルの大量供給が継続し、中長期的にはインフレ圧力が増大し、ドル安トレンドが顕在化するのでは
【日本】
・既に発表されている60兆円の財政支出のうち30兆円は未消化の状態と言われる
【中国】
・コロナ禍の収束が早かったことに加え、もともと債務水準が欧米日と比較して低く、財政に余裕があるように見受けられる
【ドイツ(欧州)】
・日米と違って臨機応変に財政が出動できる体制ではなく、財政支出は相対的に小さい
・そのためユーロの停滞が長引く一方、財政が自由でない分、その結果インフレの脅威は米国より小さい


では、世界の政府債務残高はどのようになっているでしょうか。1880年からの先進国と新興国の政府債務推移をGDP比で見てみましょう。

画像3

債務のGDP比は、企業で言うところの売上に対する借金です。現在の先進国の政府債務は第二次世界大戦と同水準であるGDP比125%まで拡大しています。
新興国の政府債務も深刻です。新興国の公的債務は米ドルベースになっていますから、米ドルが変動する環境下において自国の通貨政策の自由度が失われ、ドル高が進むとインフレが加速していくことになります。例えば、トルコなどでインフレ率が大幅に上昇しているのは皆さんご存知の通りです。今後、新興国の財政の劣化、通貨安が世界経済の波乱要因の一つになるということには注意が必要です。

借金がここまで大きくなった背景には、現在の歴史的な低金利があります。

画像4


この30年間、日本は世界の中で最も長くゼロ金利、デフレの時代でありました。しかし、その日本もアベノミクス以降、デフレからインフレへと、トレンドが転換しつつあります。一方、米国、ドイツの金利も長期間にわたり低下傾向でした。足元でドイツもマイナス金利ですが、米国はプラスを維持していることには注意しなければいけません。つまり、今後、米国で金利が成長率を上回って上昇した場合、インフレになりやすいということです。

30年という時の流れは一つの時代を形づくるのに十分な時間でした。これから来る5年、10年は、新しい時代を形成する土台ができるという意味で、非常に重要です。これまでは「インフレって何?」というくらいデフレという言葉が席巻してきましたが、これから迎える5年、10年は新たなインフレの時代になるというのが私の見立てです。

金融市場をよく見ていくと、既に新しいインフレの予兆が始まっていることに気がつきます。

画像5

日本は長く続いたデフレというスーパートレンドがインフレへと転換しつつあるということを、私達は現実として受け止めなければならないと思います。
私は、企業調査を長らくしてきた者として、デフレが個別企業にとっては非常に厳しいものだったということは、誰よりも実感してきました。一方、圧倒的に良い製品を作っているのに、その価格が安すぎると感じている、成長を志向する経営者は枚挙に暇がありません。価格が通常のレベルで上昇する環境になった時には、成長意欲の強いそうした企業は一瞬にして飛躍できると私は確信しています。


メガトレンド②デジタル・テクノロジー~人類の歴史から考える、コロナ後の世界~

2つめの大きなトレンドは、デジタル・テクノロジーの本格的拡大・普及です。

コロナ後の世界に何が起こるのかを考えるにあたり、より大きな視点で今回のコロナ危機をとらえる必要があります。
人類の歴史を紐解いてみると、感染症のパンデミックは繰り返し起こっていることがわかります。中でも14世紀のパンデミックであるペスト流行は、現在の私達に多くのことを示唆しています。

当時(1347年~1353年)の記録を見ると、ペストの流行はモンゴルからイタリアに移りヨーロッパ中でペストが本格化しました。今回の新型コロナウイルスも、中国からイタリアへという経路をたどったという意味では非常に共通点があるように感じます。
中世は封建制をベースに荘園という統治単位で成り立っており、その統治機構の中心にいたのがローマ教皇、ローマ教会でした。当時のペスト・パンデミックでは、ヨーロッパの人口8000万人のうち60%が死亡したと言われています。人口の半分以上が亡くなったことで、荘園で働く農奴がいなくなった。人々はパンデミックの終息を祈ったのですが、その祈りが届かず、ローマ教会の権威は失墜します。荘園領主、聖職者が経済基盤を失って弱体化し、そこに初めて国王を中心とする国家という概念が生まれたと言われています。
一方、神に祈っても隣人が死んでいく現実を目の当たりにして、人々は歴史に学ぼうとする。そしてギリシャ、ローマの古典に回帰するというのがルネッサンスの始まりです。ルネッサンスというのは、「合理性・人間らしさに回帰すること」、つまり、もっと合理的かつクリエイティブになることを追求する運動でした。そこに新しい科学、テクノロジーが生まれるベースが出来上がりました。

ルネッサンスの最大の改革は科学による宗教改革でした。例をいくつか挙げましょう。これはグーテンベルクが印刷機を発明して擦られた世界最初の聖書です。

画像6

マルチン・ルターによる宗教改革は、「95ヵ条の論題」を印刷し、ドイツの教会の壁に貼り出したことから始まったと言われています。それまで聖書はラテン語でしたが、ルターはローマ教皇に託されて聖書をドイツ語に翻訳していました。グーテンベルクが発明して活版印刷された1ページの聖書の要約が、色とイラストをつけて出されたわけです。これが14日間で全ドイツに知れわたり、4週間で全キリスト教会の間に行きわたったと言われています。
ここで私が申し上げたいのは、活版印刷というテクノロジーの本質はマス・コミュニケーションの始まりであり、現在のインターネット、SNSといったデジタル・テクノロジーの普及・拡大も同一線上で考えることが出来るということなのです。
ローマ教会は中世そのものでした。宗教改革を後押しした印刷テクノロジーが中世を終わらせ、中世から近世のドアを開けたわけです。現在のデジタル・テクノロジーも、時代の権威を変えるエネルギーを生んでいると考えるべきです。新型コロナウイルス感染拡大による景気の停滞がそれを加速度的に顕在化させていると思います。国がどんどん財政支出を拡大するのはローマ教会が財政に窮(きゅう)して免罪符を出す当時の状況を彷彿とさせます。今後起こるであろうデフレからインフレへの大転換中で生まれてくる新しいテクノロジー、それは最終的にはインフレに対応する生産性改善の新しい原動力になる、そういう視点で今の時代を俯瞰して見ていく必要があると思います。

このように、時代は常に新しいテクノロジーと共に作られてきました。18世紀の大航海時代も同様です。
産業革命の始まりは蒸気機関を発明したジェームス・ワットとされます。ワットは腕のいい機械技術者でしたが、実用化には膨大な資金が必要で、ジョン・ローバックが多額の資金を提供しました。今でいう、ベンチャーキャピタルの役割を担ったのです。
ローバックはその後自身の製鉄所が破産し支援が難しくなりましたが、そこにバーミンガムの金属加工業者(ウェッジウッドの陶器に繊細な金属加工を施すことで成功していた)ボールトンがワットの新たなパトロンとなり、ボールトン&ワット商会を設立しました。つまり、資本家がワットを支え、汽車、汽船の出現につながって世界のモビリティ革命が産声を上げたわけです。
同時期に始まった電気通信ではそれまで3ヵ月かかった貿易決済が同日で出来るようになった。それから、鉄道が出来、内燃機関が発展し、それまで無価値だった石炭、その後には石油に価値が生まれることになりました。こうしてモビリティ革命はクルマや飛行機に拡大していきました。つまり、テクノロジーを介在して、現在に至る資本市場主義のシステムへと大変換が促されていくわけです。そこには事業を推進していく起業家(ワット)と、そして資本家(ボールトン)という役割が生まれるという新しいトレンドがありました。


では、現在の世界では何が起こっているでしょうか。こちらは、資産階級別の世界の成人人口と保有する資産額の図です。

画像7

現代では経済至上主義が行き過ぎ、現状維持が困難と思われるレベルまでの極端な「富の遍在」を生み出しました。世界の上位1%の富裕層が世界の富の46%を独占するという極めて異常な状態にあります。資本市場主義の仕組みの中で生まれた最も大きな課題は「富の偏在」だということをしっかりと見ていかなくてはいけません。

行き過ぎた「富の偏在」は、社会変革のエネルギーを生みます。革命が起きるということではなく、富の偏在を平準化する何らかの作用が働くと私は考えています。そうした中、日本の富の偏在、日本でも子供のいる世帯の8世帯に1世帯は貧困世帯になっているという現実を直視しなければなりません。そうした現実が、日本でも社会全体あるいは政治に対して鬱積した不信感、不満につながっていると感じます。

どの時代も経済的窮乏(きゅうぼう)とテクノロジーの勃興があったわけですが、時代を大きく転換させるカタリスト(触媒)としてパンデミックが作用したのは偶然ではないと思います。第一次世界大戦前後スペイン風邪の時も世界で4000万人の死者が出たと言われ、その中で、英国の覇権が失墜し、新興国の米国が台頭してきました。ただ、これも急に米国が大国として歴史の表舞台に登場してきたわけではありません。大英帝国は覇権を維持するためにヨーロッパ内でのいざこざが絶えなかったし、それまでの大英帝国の成長を支えてきた植民地で自由を求めた独立運動が展開され、覇権の維持が出来なくなることが明白でした。そうした中でパンデミック(スペイン風邪)が起こるという、歴史の連続の中で起こってきている現象であったと見ていくべきだと思います。

ルネサンスの3大発明は、先ほど申し上げた「活版印刷」に加えて、「火薬」と「羅針盤」でした。今でいえば、「印刷はSNS、コミュニケーション」、「火薬はデータ」、覇権のベースになるかもしれません。「羅針盤はモビリティの領域」です。モビリティなどの私達の移動を含む仕事がAIマシーンと協働化するという意味で、新しいエネルギー変革を促す原動力になると思うのです。今、巨大な時代の転換点にいると私は強く感じます。

皆さん、今後5-10年は大きな歴史が出来上がっていく土台になる大切な時間です。私は、30年後、100年後のことを言っているのではありません。明日、株価が上がるか下がるかということを申し上げている訳でもない。今起きている事象に対して、投資家として長期の視点を持って対応することが大切です。最終的には、そうした時代認識を共有できる経営者を1人1人探していくということが投資活動の重要な柱になると思います。次の10年20年をリードしていく起業家、経営者が日本に必ず出てくると思っています。そういう会社を今こそ発掘すべく、皆さんと一緒に、エキサイティングな時間を共有できればと思います。


メガトレンド③賢明なる投資家への目覚め~「おかしい」という目を持つ~


3つめのトレンドは「賢明なる投資家への目覚め」ということです。
賢明なる投資家になるということは、市場で起こっている異常な事を、「おかしい」と思える素直な目を持つことです。

先ほど「富の偏在」のことをお話しましたが、資本市場をよく観察すると、過度に歪曲された姿が散見されます。

1700年代にアダムスミスがその著書(国富論)で、「市場には見えざる手があって、個人の自由な判断に委ねていけば、市場は理想の状態に均衡する」と言ったと、教科書で習いました。ただ、アダムスミスはその国富論の前に出版された「道徳感情論」の中で「人間というのは、人の悲しみ・痛みを見て共感する存在である」と言っています。つまり、行き過ぎた「富の偏在」により生まれた「悲しみ・痛み」は何かの力により必ずどこかで修正されるというのが、アダムスミスが意図したことだと思います。

今、政府債務がGDP比125%まで大幅に上昇拡大している姿は、戦費拡大のために公債を増発した第二次世界大戦の時に似ています。
当時、政府債務の減少を促したのはインフレでした。政府債務を減少させるには、結局のところ、直接的な税負担を個人に強いるか、もしくはインフレという形で個人に間接的に転嫁するしかない。もしくは生産性が大幅に上昇するということしかないわけです。従って、常に新しいインフレのトレンド、そしてどこからテクノロジーによって生産性の向上・改善が生まれていくかという2つの視点をもって見ていくことが大切になります。
そういう中で我々が出来るのは、インフレを上回る成長性を生んでいくであろうテクノロジー、そしてそのテクノロジーをばねに成長する企業を見つけていくことに尽きると思います。それは複雑なことではなく、一社一社を丁寧にみていくことを惜しまなければ誰にでも出来る事だと思います。

世界で一番株が上がった米国の中の一部の業種セクターを見てみましょう。

画像8


例えば、GAFA+マイクロソフト+テスラの6社の時価総額の合計は900兆円、日本のGDPのほぼ2倍になります。ここで評価されている6社は、成長性が高く、素晴らしい会社であることは疑いようがありません。
ただ、どんなものにも適正な価格というものがあります。
その適正な価格のレベルを段々と超えつつあることは、私だけでなく市場参加者の多くが感じ始めているのではないでしょうか。株価がどんどん上がることによって高い株価が正当化されるという市場のメンタリティは、日本のバブルの時を思い出します。この6社でS&P500社の1/4(25%)を占め、日本の東証一部上場2100社の合計645兆円よりを遥かに上回ることを、「?」と思うのは私だけではないと思います。

「賢明な」というのはIQ(知能指数)が高いことではありません。ウォーレン・バフェットさんも言っていますし、バフェットさんの師匠であるベンジャミン・グレアムさんも言っているように、賢明であるというのは常識があるということと同義語です。是非、常識の目を持って世界を見ていくという原則を心掛けていきましょう。
そうすると皆さん、日本が割安に見てくるのではないでしょうか。おカネは高いところから低いところに、ゆっくりゆっくりかもしれないけど流れていくという、当たり前のことを当たり前に考えるということが今すごく重要な時だと私は思っています。そう考えると日本企業の魅力が際立ってきます。

こちらは株価が一株当たり純資産の何倍かを示す指標、つまりPBR(株価純資産倍率)の推移です。

画像9

米国はS&P500ベースで5倍に近づき、ITバブルの2000年や日本のバブルの時と同じくらい高くなっている。それに比べ、日本は1.3倍。過去30年で最低レベルの水準にとどまっています。純資産を使って成長していくことが日本企業では出来ないと市場は思っているということだと思います。
しかし、株価のバリュエーションを見ると、この30年で、米国が最も高くて、日本は最も安い。こうした二極化の異常な状態が今後もずっと続くとは私には思えません。必ずどこかで修正が起こると思います。

そして、日本企業の経営者も、ROE(株主資本利益率)、収益性を上げていく方向に大きく舵をきっていることも注目していかなければなりません。

画像10

そのことはバフェットさんのような賢明なる長期投資家も十分理解しています。23年前、日本が金融危機だった1998年、「日本企業のROEの低さに困惑してしまう」と言っていたバフェットさんが、昨年8月、日本の商社株に6350億円の投資を実施しました。極めて象徴的な出来事だったと思います。

翻って、「おカネは高いところから低いところに、ゆっくりゆっくりかもしれないけど流れていく」という当たり前が現実のものになるかは、投資家の皆さんが常識の目を持てるかにかかっています。日本企業の株式の約半分47%を保有する2大投資家は外国人投資家と日本の個人投資家の皆さんです。

画像11


画像12


これからのインフレの時代を迎えるにあたり、現金の価値が目減りしていくと想定される中で、日本の個人金融資産1,845兆円のわずか13%が株と投資信託で、残りは現預金に近い形で保有されています。これも正常な状態ではありません。
しかし、日本の個人の皆さんは常に賢明な判断をしてきました。時代が大きくインフレのトレンドに変わっていく兆候がでてきたら、短期間に株にシフトするトレンドが顕在化すると私は考えています。政策もそれを後押しするでしょう。米国では80年代前半にIRA、401Kプランといった税制優遇策が採られ、貯蓄が投資に誘導されてきました。日本でも同様の政策が貯蓄から投資へのトレンドを後押しして行くと思います。異常なことは長く続かない。必ずどこかで修正されると思います。


Q1 低成長国の日本に投資しても平気?

低成長国の日本株に投資しても大丈夫でしょうか。先進国の中でも少子高齢化が著しく、潜在成長率が見劣りする日本株は、どうしても海外投資家に敬遠されるのではないでしょうか?

阿部:人口増加の配当という問題ですね。人口が増加することによる経済成長の配当ということですが、現実的に、経済は人口×1人あたりのGDPで決まるので、人口が日本のように少なくなっていくというのは明らかにネガティブな要素だと言わざるを得ません。
ただ、問題なのは、この30年、1人あたりのGDPが成長しなかったこと、つまりデフレの環境にあったことの方が問題なのです。今後、人口減少の速度を超えて、1人あたりの成長率が高まることがインフレと生産性向上で実現されれば、他の先進国に対して日本の成長力が大幅に見劣りするという状況は緩和され、上回ることさえ可能だと思っています。

より長期の視点で見れば、今後、他の先進国や中国も高齢化を経験する中で、日本が高齢化という環境下における新しいモデルを構築することが今こそ問われている。新しい成長を牽引するテクノロジーによって出来てくるモデルは、エネルギー大量消費型のモデルではありません。つまり人口増加を是とする成長モデルでは必ずしもない。私はすべてを見通すことはもちろん出来ませんが、今後どういう形になるかを考えるとき、例えば、日本がオイルショックも乗り切った環境先進国であるということをふまえると、新しいエネルギー、例えば再正可能エネルギー、水素などから生まれてくる新しいモビリティといった領域で生産性を高めることが出来るのではないかと思います。こうした領域で生産性を高められれば、人口増加に依存しない成長は確実に実現出来ると私は考えています。

さらに投資で成功するには、マクロ経済を占うのではなく個別の企業をみていくことが大事です。経済全体について不確実な議論をするのではなく、個別企業の議論をする時だと思います。そうすれば、良い製品を持っていて新しいテクノロジーを応用しながらも、長期的に過小評価され割安なグローバル優良企業が日本にたくさん見つけられると思います。そういう企業にしっかりと投資をしていくのが今だと思います。

Q2 世界株が崩れれば、日本株もあぶないのでは?

米国の中央銀行FRBが利上げ見通しを前倒ししました。利上げが早まって世界株が崩れれば、グローバルに活躍する日本企業も影響を受けざるを得ないとの見方について、どう考えますか?

阿部:メガトレンド③でお話ししたように、私はこれから米国株が、これまで、長期的には30年間、短期的にはこの1、2年、常に世界の株式市場をリードしてきた状態がこれからも同じように続くとは思っていません。長期的には米国株は上昇カーブのピークに達していて、懸念されるのは、一般的にいわれているように、インフレがFRBの金融政策に影響を与える、つまり金利が上がる局面だと思います。あまり極端なことを申し上げるつもりはありませんが、もしも米国株が崩れたら、例えばPBR 5倍と、これまでのトレンドで最高レベルにあったものが過去の平均まで落ちただけでも、長期にわたって影響は大きなものになります。一方、米国の株式市場にそれだけのダメージが出た場合は、世界中に影響を及ぶことは覚悟しなければなりません。
くれぐれも誤解のないように申し上げますが、米国株が下落すると申し上げているのではありません。
一方、日本株というのは、現状も歴史的なトレンドとの比較においても、極めて割安感があるということを申し上げたいと思います。ショックによって受ける下落と、その後の低迷の時間という点で言うと、他のバリュエーションが高いレベルにある市場に比べて、日本株は他の市場ほど大きなダメージを受けるとは思いません。

そういう中で、個別の企業を見ていくと、長期的にものすごく魅力的に投資出来る銘柄が日本の株式市場の中にはたくさんあります。日本は、世界の需要、特に米中アジアの需要を取り込める世界3位の経済大国です。日本経済としても企業としても、株式市場の低迷の影響は当然受けますが、そこから受ける相対的な傷の深さというのは深くないと考えています。
もしその下落の中で銘柄を選別すれば、時間が経てば、ほとんどダメージがなく乗り切れるとさえ思っています。

投資のタイミングがいつかは分かりません。常に今だと思っていますが、投資においては、余裕をもって投資することを心掛けることが大切です。一般的に言われるように、皆さんの財務的な余裕を図りながら、銘柄分散よりも時間分散をすることが大切です。

日本株には割安感があるということをしっかり認識することが大切です。今のグローバル株式市場との相対比較においても、過去のトレンドとの相対比較においても、株式バリュエーションの絶対価値という基準においても、どの観点から見ても日本株は割高ではありません。割高ではないものが一時的に割安になる、あるいは割安なものが一時的にもっと割安になるということは起こります。でも、そこは思い切ってアクションを取る時だと思います。

Q3 世界株に勝てる日本株って?

世界株に勝てる日本株の条件はズバリ何でしょうか?

阿部:それはこれから世界経済の回復によって出てくる、1人1人の新しい消費ニーズに対応出来る仕組みを日本企業が持っているということだと思います。これまでの単一商品の大量生産、大量消費型から1人1人に分散された多様なニーズに対応した多品種・少量の量産を実現できる企業が、日本経済を牽引する主役としてクローズアップされていくと思います。つまりリアルな商品サービスを既に持っていて、多様なニーズに応えながら多品種・少量を量産し、多くの人に供給する仕組みを持った企業です。それはモノを作ることも含めて、それにソフトの価値を如何に付加するか、ハードウェアとソフトウェアを融合させられる企業ということです。
ハードがない企業がソフトだけを作ることが評価される時代はもう終わったと私は思います。ハードがソフトの需要を広げ、ハードの革新がソフトの革新を促す、つまり相互に影響しながら新しい需要に応えていく。日本企業の製品は高品質で、「そこまでやるのか?」ということを追求してきた製品をもった企業がたくさんある。ソフトで遅れていたことはむしろ幸いするとさえ、私は思っています。
なぜかと言うと、消費者のニーズと直接接するのはハードです。具体的な製品サービスを持っている企業がそこにソフトをアタッチさせる、それこそがこれからの成長の方程式です。ここは日本企業に圧倒的な優位性があると思います。例えば自動車産業においてEV(電気自動車)が出遅れているように言われていますが、EVだけに舵をきることは現実的なソリューションだとは思いません。つまりそうした企業は、ニーズが多様で、それぞれの国でカーボンニュートラルに求められているソリューションが違うことを知っているわけです。多様なソリューションを提供することがモビリティカンパニーとしてのコアコンピタンスだということを分かった上で現実的な対応策を模索しているのです。
同じように日本企業はソフトで遅れてきた現実がある一方で、これからまさにソフトでリアルな価値を高めていけるという意味で、投資家として最も面白い領域が日本に広がっていくと思います。

まとめ

皆さん、今回は、3つのメガトレンド、①インフレの時代、②デジタル・テクノロジー、③賢明なる投資家への目覚め、について阿部の考えをご紹介しました。
いずれも、日本企業の価値が向上していくかどうかを見極める上で、重要なポイントだと思っています。

新型コロナウイルス感染拡大による異常事態は、必ず終焉の時が訪れます。
その時に、今起きている出来事と、その事象が大きなトレンドの中でどこに位置づけられるか、自己強化的にトレンドがどのくらい増幅されていくかを考えることが重要だと申し上げました。

非接触社会という新しい世界に移行していく中で、SNSなどのコミュニケーション・テクノロジー、その基盤を支える5G、AIやデータ、自動運転や宇宙モビリティなど、大きなトレンドの真っただ中に私達はいます。世界の「富の偏在」によって、地政学的な多くの出来事が日々起こっています。

是非、この不確実な時代を、投資家として共に、未来に資本を振り向けていきましょう。

※こちらの記事は2021年7月21日時点の情報をもとに作成しております。
※内容は個人の見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。


Twitterで更新のお知らせをしています。 ぜひフォローお願いします!

ありがとうございます!
独立系投資会社スパークス・アセット・マネジメントの公式noteです。 「もっといい投資をしよう!」を合言葉に、投資への思いを語る場にしたいと思います。