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Vol.3 日本再興へのメカニズム ~株主を重視する考え方は本当に日本的ではないのか?~

スパークス・アセット・マネジメントの川部でございます。

前回、日本株が世界中の投資家から関心を集め続けるにはROE(株主資本利益率)の改善がカギであるということについてお伝えしました。ROEとは、株主が出資した資本に対して企業がどれだけの利益を上げているかを表す指標です。一方で、ROEの重要性への認知が広がる中で、米国のような株主資本主義は日本的経営の価値観にはそぐわないという批判が見られます。

株主を重視する考え方は本当に日本的ではないのか?

今回はこの点について、少し別の視点から、歴史をさかのぼって考えてみようと思います。

時計の針を幕末・明治維新期にまで戻してみましょう。年功序列に特徴づけられるような日本型雇用の源流を辿ると、江戸時代の大商家に行き当たるといわれています。同時代には、江戸や大阪の目抜き通りに店を構え、1,000人を超える奉公人(現代の社員に相当)を雇用している商家もありました。10代前半で丁稚(でっち)として商家に入り、雑用や読み・書き・そろばんの訓練を受ける。そして、手代(てだい)など複数の職位を経て、番頭まで昇進していくというのが奉公人のキャリアの王道でした。番頭は、店のすべてを取り仕切ることから、現代でいうところの「雇われ社長」とも言えると思います。番頭は言わば「専門経営者」であり、大商家はこれを積極的に登用・活用してきました。結果として、店の所有者である商家と実務を担当する番頭とで、いわゆる「所有と経営の分離」が実現していたといえます。つまり、「所有と経営の分離」に特徴づけられる株主資本主義は、米国から輸入された概念ではなく、すでに日本企業のDNAに刻まれた価値観であると考えることができると思います。

ここで、「所有と経営の分離」についてご説明します。会社の所有者と経営者が分離されていることは、「所有と経営の分離」と表現され、株式会社の基本的な仕組みです。豊富な資金を持つ人が、会社を経営する能力(スキル・時間)を併せて持っているとは限りません。また経営能力のある人が事業資金を潤沢に持っていない場合もあります。そのため、資金のある人(株主)が有能な経営者に資金を託し、株主に代わって経営をしてもらうことで、株式会社は資金力と経営力の両方を得ることができます。あくまでも経営者は株主の代理人として企業経営を行うという考え方です。一方で、経営者の利害が株主とは一致しない場合があります(エージェンシー問題と呼びます)。例えば、合理的な理由もなしに、経営者が企業の成長にとって必要なリスクをとらないことなどが挙げられます。私はアナリストという仕事を通じて、日々多くの企業経営者の方々と対話をしていますが、「先代達が一生懸命積み上げてきた資金を私の代で使うわけにはいかない」という言葉をお聞きすることがあります。また、日本企業(民間非金融法人)は、320兆円もの現預金をため込んでいる(2022年12月末時点。出所:日本銀行)という事実があります。株主は、事業運営・成長投資のために、経営者に資金を託しています。この経営者に託したはずの資金が、しっかりと活用されていないという現実に目を向けるべきだと思います。株主の資金を適切に活用し利益を増やす(=ROEを改善させる)ことが必要です。

所有と経営の分離に特徴づけられる株主資本主義の考え方が正しく理解され、日本企業の持つ潤沢な資金が成長投資に活用されることで、日本が再成長し、日本株が世界中の投資家から関心を集め続けられるようになることを期待しています。


スパークス・アセット・マネジメント株式会社
チーフ・アナリスト 川部 正隆

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