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Letters From SPARX ~2022年3月 月報まとめ~

こんにちは!スパークス・アセット・マネジメント、公式note運営チームです。

ロシア軍のウクライナ侵攻による地政学的リスク、コモディティ価格とエネルギー価格の高騰、インフレ懸念など、投資になかなか前向きになれないようなニュースが続いた当月、各ファンドでもマクロ面に対するコメントが多くみられました。
刻一刻と変化する情勢の中でも、弊社は変わることなく一貫した投資哲学のもと投資を続け、日々企業調査を行っております。ぜひ興味のある内容について、リンク先でご覧になってみてください。

■地政学的リスク等、マクロ面の変動要因に対して

スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)

ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まって1ヵ月以上が経ちました。この期間、直接的・間接的なものも含めて企業活動面、ひいては株式市場でも様々な影響が生じました。今後更に悪化が想定されるリスクについても、サプライチェーンの混乱、コモディティ価格の上昇、インフレの悪化、欧州を中心とした経済の減速、中国を巻き込んだ地政学的リスクの高まりなど、枚挙に暇がありません。これら一つ一つについて当ファンド組入銘柄に及ぼすマイナスインパクトの定量評価には限界があります。ただ確実に言えるのは、どの企業もロシアやウクライナにおける大規模な事業展開は行っていないことと、いずれの企業も有能な経営陣および強固なビジネスモデルによって過去の様々な危機を見事に乗り切ってきているという事実です。引き続き刻一刻と変化する情勢をモニタリングしながら、ポートフォリオ運用を行っていく方針です。

スパークス・新・国際優良日本株ファンド | SPARX Asset Management

 

スパークス・新・国際優良アジア株ファンド(愛称:アジア厳選投資)

短期的にみると、ロシア軍のウクライナ侵攻による地政学的リスク、コモディティ価格とエネルギー価格の高騰、インフレ、利上げサイクルがマクロ面の主な変動要因となり、世界の株式市場に影響を及ぼすでしょう。アジア地域では、中国のインターネットセクターにおける継続的な規制リスク、特に中国の新型コロナウイルス新規感染者数の再増加、欧米諸国の景気減速に起因する輸出の鈍化などが短期的なマクロリスク要因となるでしょう。 ただし、過去数ヵ月間における市場の調整を踏まえると、そうしたリスク要因の多くは既に認識され、市場に織り込まれていると、当ファンドは考えます。アジア株式市場では、グロース株からバリュー株への大規模な入れ替えが進んでいます。
過去の月次報告書でもご説明した通り、当ファンドはマクロ要因を予測するのではなく、ファンダメンタルズに基づいたボトムアップ・リサーチによって銘柄を選定する手法を採用しています。長期的にみると、利益成長、業界の潜在性、経営陣の能力といったファンダメンタル的な要素が、次なる優良銘柄を見極めるための主要指標になると思われます。当ファンドは引き続き、アジア地域における優れた投資機会はテクノロジー、消費、金融、インフラといったセクターにあるとみています。Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/半導体・半導体製造装置)、AIA Group Ltd(香港/保険)、Tencent Holdings(中国/メディア・娯楽)といった当ファンドの主要組入銘柄の多くは、これまで何度もマクロイベントを経験し、より強力な企業へと進化しています。
アジア地域には、引き続き長期的な投資機会が潤沢にあります。アジア経済の興隆とアジア企業の地位向上という長期的な投資テーマは健在で、今後も続くと考えられます。当ファンドは、「信頼できる企業」への投資を継続しつつ、当ファンドが選好する「次の優良成長企業になる潜在性を示しているアジア地域の新興企業」の発掘に努めます。

スパークス・新・国際優良アジア株ファンド | SPARX Asset Management

 

スパークス・ジャパン・オープン(愛称:キョウソウの架け橋)

足元は前月から続くロシア軍のウクライナ侵攻による地政学的リスクの高まりについて注視しています。日本はロシアと陸続きではないものの国境を接しており、北方四島の返還交渉をしているという関係からすれば地政学的にはリスクがあると言えます。一方で日本の貿易額におけるロシアの比率を見ると輸出は 1%弱、輸入は 2%弱であり、経済的な繋がりは限定的です。
当ファンドについて言うと、投資先にはロシアやウクライナを主要な事業地域としている企業はありません。
参考までにオランダの調査会社サステナリティクス社がロシア軍によるウクライナ侵攻の影響を調査して、リスクのある企業66 社のリストを公表しましたが、そこに当ファンドの投資先企業は含まれていません。
当ファンドは、ロシア軍のウクライナ侵攻によって発生した人道的な被害の発生については見過ごすことのできない問題であると考えています。それと同時に世界の人道支援の目がウクライナに向かうことにより、他地域での支援が減ることのリスクも懸念しています。国連 WFP 協会(World Food Programme、飢餓と貧困の撲滅を使命とする WFP国連世界食糧計画を支援する認定 NPO 法人。以下、WFP)によれば、イエメンでは人口の半分以上が急性の飢餓に直面しており、ミャンマーでは人口の 4 分の 1 が食料不安に追い込まれているとのことです。ロシア軍によるウクライナ侵攻以前の今年 1 月時点ですでに WFP は資金不足で食料配給量を削減せざるを得ない状況という報告をしています。
当ファンドでは、投資活動を通じてこのような状況に適切に対処する方法について検討を行っています。そもそも武力紛争が人道的被害や飢餓の発端であることを考えれば、平和な世の中を構築することこそが根本解決であると言えます。そのためには文化を育みコミュニケーションを促進するような産業に投資し、兵器産業には投資しないということが責任ある投資態度であると考えます。また原油や天然ガスなどの地下資源が地政学的リスクや専制的な政治体制の維持に繋がる可能性を考えれば、再生可能エネルギー比率を高めることも平和に貢献するでしょう。
なお、人々が友好的な関係を築くためには「対話」が極めて重要だと考えています。当ファンドが日々行う対話も長い目で見て世界の安定につながる活動と考え、より一層の対話力の強化を進めます。

スパークス・ジャパン・オープン | SPARX Asset Management

 
こちらのファンドも同じ内容を取り上げております。
スパークス・アクティブ・ジャパン | SPARX Asset Management

 

スパークス・M&S・ジャパン・ファンド(愛称:華咲く中小型)

年初から株式市場の調整が進む中で、当ファンドはいくつかの銘柄に新規投資を行っています。急速に進展するインフレを背景に資源関連銘柄の株価が上昇し、当ファンドにとって厳しい環境ではありますが、むしろ新たな投資の好機と捉えています。というのも、本年は金利上昇により、高い株価評価を受けてきた銘柄ほど株価下落が顕著な傾向にあります。金利水準の一段の上昇には留意が必要ではあるものの、企業独自の成長ドライバを有した銘柄を、成長率に比し割安な水準で買える機会が増えたと考えているためです。新規投資を行った銘柄の業種は多岐にわたるものの、「いい会社を安く買う」という投資戦略は全ての企業に共通しています。
(中略)金利上昇とインフレ懸念、さらに地政学的リスクと、複数の懸念材料が依然として市場参加者の頭をもたげる環境が続いています。相場環境改善のタイミングを合理的に予測するのは困難ですが、当ファンドはこのタイミングを活かし、ボトムアップ・アプローチを通じてより良いリスク・リターン特性を有するポートフォリオへの改善を進めてまいります。

スパークス・M&S・ジャパン・ファンド | SPARX Asset Management

 

スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド(愛称:ライジング・サン)

ウクライナ情勢については、ロシア軍のチェルノブイリ原発からの撤退等により過度な懸念は後退しています。しかし、日米欧が対ロシア経済・金融制裁を発表したことで商品市況は急激に上昇しました。それにより、世界的なインフレ警戒から各国の中央銀行が金融政策の引き締め姿勢を強めていることが株式市場の足かせになっています。そんな中、日本銀行は金融緩和を続けていることから為替市場では円安が進行しています。円安は輸出企業にとってはメリットがある一方で、日本は資源輸入国であるため原材料価格の上昇が懸念されます。その意味で新年度の投資を考えるうえで企業のコスト上昇に対する製品やサービスへの価格転嫁力が重要になると考えます。そのため高いマーケットシェアを持つ企業、競争力の高い製品・サービスを持つ企業などに重点的に投資してまいります。

スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド | SPARX Asset Management

 

スパークス・プレミアム・日本超小型株式ファンド(愛称:価値発掘)

新年度の日本企業の業績見通しは、商品価格上昇、部品不足などが継続すると考えられることから、悲観的な決算発表が多くなると予想され、短期的には株式市場が大きく好転することは難しいと考えます。しかし、下期以降の業績は価格転嫁や部品不足の解消、経済活動の正常化などの恩恵を受け、大きく改善することが予想されることから、市場のさらなる下落リスクは小さいと考えます。また、ロシア軍によるウクライナ侵攻時の株式市場の急落で当面の大きな売り圧力はピークを越えたと思われ、割安銘柄への投資や自社株買いなどが相場を下支えすると考えています。大型株と比較して出遅れている小型株のパフォーマンスは回復余地が高いと考えます。運用方針としましては、急落からの戻りが鈍く割安のまま放置されている銘柄への投資を増やしてまいります。特に、インフレ対応力が高く中期的に社会の変化に追随できる企業などに選別投資を行ってまいります。

スパークス・プレミアム・日本超小型株式ファンド | SPARX Asset Management

 

 ■その他

アクティブ運用型ファンドとして差別化されたリターンをあげるためには― スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)

過去 14 年の歴史を振り返ると、当ファンドは現在保有している主力銘柄を少しずつ組み入れてきたことがわかります。時を経てこれらの企業は日本の時価総額トップ 30 社のうち、2022 年 4 月 5 日現在、9 社がランクインしています。例えばキーエンスは投資を開始した当時はまだ知名度・時価総額ともに低かったのですが、今では多く人々が知る優良企業となり、時価総額も第 3 位まで成長しました。これが長期投資の醍醐味といえます。
日本ではトヨタ自動車㈱が時価総額でトップに君臨し続けていますが、米国では 2000 年代半ば以降、Apple 社、Google 社、Microsoft 社、Amazon 社といった企業の時価総額が大幅に増加し、それまでトップクラスであった石油大手 Exxon Mobil 社や資本財メーカーGeneral Electric 社などを一気に追い抜きました。これらの企業躍進の原動力はPER の拡大ではなく利益の大幅な拡大です。また、アジア地域においては Tencent 社(中国)、TSMC 社(台湾)、Samsung 社(韓国)が各国株式市場において時価総額トップクラスとなりました。
当ファンドは組入銘柄から日本最大の時価総額になる企業が誕生すると期待しています。このような視点をもって銘柄を選択することは、アクティブ運用型ファンドとして差別化されたリターンをあげるために欠かせないと考えています。2017 年と 2019 年に米国で発表された論文によると、これまで株式市場で生み出された富(時価総額の増大分)は、今まで存在した全上場企業のうちほんの一握りの銘柄によってもたらされているという研究結果がでています。米国株式市場では 1926 年から 2016 年にかけて約 35 兆ドル分(約 4,200 兆円)時価総額が増えたとされています。この増加分のほぼ全てが、調査対象となった上場企業 26,000 社のうち僅か 4%の銘柄(約 1,000 社)によってもたらされていたのです(*)。また米国を除く世界の株式市場では、1990 年から 2018 年にかけて増えた約 16 兆ドル(約 1,900兆円)の株式時価総額はたった 1%足らずの上場企業によってもたらされていたことが判明しています(出所:Hendrik Bessembinder 著 、“Do Stocks Outperform Treasury Bills?”[2017 年]、 “Do Global Stocks Outperform US Treasury Bills?”[2019 年] )。
(*) Apple 社(米国)、Google 社(米国)、 Microsoft 社(米国)、 Amazon 社(米国)の4社の時価総額の合計だけでも 1,000 兆円規模になるので、感覚的にもわずかな社数の貢献によるものであることが分かります。

以上のことから、将来の時価総額最大手になりうる少数の有望企業に投資することがパッシブ運用を上回るうえ(TOPIX のような時価総額加重平均型指数を上回るうえ)で如何に重要であるかが分かります。そして実現のためには、数兆円規模の利益を生み出す潜在力を秘めた企業であることが条件となるでしょう。上述のとおり PER 上昇だけに依存した時価総額増大には持続性はないと考えるためです。現在の当ファンド組入銘柄のうち、国内時価総額 2位のソニーグループの 2021 年 3 月期の税引前利益は約 1.2 兆円とトヨタ自動車㈱(同約 2.9 兆円)に比べるとだいぶ開きがあります。日立製作所は同約 8,400 億円で、数年内に 1 兆円を目指している段階です。リクルートホールディングス、日本電産などは業績の伸び率が非常に高く、今後の伸びしろも大きいビジネスですが、まだ利益水準が 5,000億円に届いていません。ソフトバンクグループが数兆円単位の利益を生み出せるようになるには投資事業が軌道にのる必要がありそうです。当ファンドの投資先企業が、すぐに日本でトップの時価総額となるのは容易ではないかもしれません(**)。しかし、いつかはそのような企業が出てくることが望まれます。その可能性があるのは、これからの日本を代表するグローバル成長企業であると、当ファンドは考えます。
(**)ソニーグループや日立製作所であれば年率 15%成長で 10 年後、10%成長で 15 年後に 3~4 兆円規模の利益に、リクルートホールディングス、日本電産などは年率 15%成長で 15 年後に同規模に届く計算になります。

スパークス・新・国際優良日本株ファンド | SPARX Asset Management

 

芸能プロダクション「JYP Entertainment」 ― スパークス・韓国株ファンド(愛称:韓国厳選投資)

当月は、当ファンド組入銘柄の「JYP Entertainment」についてご紹介します。
同社の 2021 年第 4 四半期(10-12 月)の売上高は 637 億ウォン(前年同期比 52.9%増、前四半期比 11.4%増)、営業利益は 163 億ウォン(前年同期比 55.1%増、前四半期比 10.6%減)、営業利益率は 25.6%でした。この業績は市場予想を若干上回っています。新アルバムを発表した同社所属のガールズグループ TWICE とボーイズグループ Stray Kids の同四半期のアルバム売上枚数がそれぞれ 83 万枚、92 万枚、日本で有観客ライブを再開したガールズグループ NiziU(ニジュー)の同四半期売上高が 95 億ウォンとなり、2021 年通期の NiziU の売上高を約 180 億ウォンに押し上げました。
主要アーティストのファン層が広がり人気が高まっていることは、頼もしい限りです。TWICE は北米地域のファン層が拡大しています。アルバム売上枚数はこれまで 50 万枚前後で落ち着いていましたが、2021 年第 4 四半期(10-12月)は 81 万枚に増加しました。今年 2 月にニューヨークなどの米国 5 都市で 7 回開催されたコンサートはいずれもチケットが完売となり、それぞれ約 10 万人が来場しました。コンサートの開催は当初 5 回の予定でしたが、人気を受けて 2 回追加されました。また 5 月にはロサンゼルスでアンコールコンサートが開催されることになりました。この他、4月には東京ドームで単独公演が開催されます(こちらも当初は 2 回の予定でしたが人気を受けて 3 回となりました)。日本でのコンサート開催は 2 年ぶりで、7 月には 4 作目のアルバムがリリースされる予定です。TWICE はチームワークがよく、活動 7 年目にしていまだにファン層の拡大が続いています。
Stray Kids は 3 月 18 日にリリースしたアルバムの事前予約が約 130 万枚となり、同グループの従来の記録を約 40万枚上回りました。同アルバムはビルボード 200 で 1 位を獲得しました。同グループは 4 月から 7 月にかけて、ソウル、米国、日本で計 15 回にわたって公演を行います。2 月に活動を開始した新ガールズグループ NMIXX はアルバムの売上枚数が既に約 32 万枚に達しており、今年さらに 4 枚のアルバムを発表する予定です。また、ガールズグループITZY と NiziU もそれぞれ年内にコンサートツアーを行う予定があります。 当ファンドの組入銘柄のファンダメンタルズは、依然として損なわれていないと私どもは考えていますが、今後も慎重に注視し、投資目的との整合性を保っていく方針です。当ファンドは、韓国における事業の魅力と構造改革だけを原動力に持続的かつ長期的な成長を遂げると考えられる銘柄を厳選し、ポートフォリオを構築してまいります。

スパークス・韓国株ファンド | SPARX Asset Management

 

医療事業サービス「シップヘルスケアホールディングス」 ― スパークス・少数精鋭・日本株ファンド

当ファンドでは、2015年半ばからシップヘルスケアホールディングスに投資しています。同社は、1992年にグリーンホスピタルサプライ株式会社として設立され、2009年に持ち株会社体制へ変更する際、シップヘルスケアホールディングスと社名変更しています。社名のシップ(SHIP)とは、企業理念「Sincere(誠実な心)、Humanity(「情」の心)、Innovation(革新者の気概)、Partnership(パートナーシップ精神)」の頭文字、そして信頼できる仲間たちと航海を続ける船(SHIP)に由来しています。
同社は5事業を展開しています。各事業の詳細は割愛しますが、「トータルパックプロデュース事業」が最も利益貢献しています。この事業は大病院を中心とした病院建て替えのコンサルティングサービスです。日本には1970年代に建てられた、老朽化した病院が多く、今後も建て替えは増加する見込みです。病院を建て替える際は、病棟設計、各医科の配置と動線、機材調達、IT導入など、検討課題が多岐にわたるため、同社のようなコンサルティングが必要とされます。
同社のユニークな点は、上記のコンサルティング案件を受注するために、一見すると低収益で無駄に見える「メディカルサプライ事業」を展開していることです。この事業は、注射器、ガーゼなどと言った医療用消耗品を病院に販売する事業です。病院の消耗品は、膨大な種類が存在し、在庫管理の負担が重いため、消耗品の管理を支援してくれる企業が必要とされています。一方、この事業の本質は、卸(商社)と同じです。売上規模は大きいのですが、利益率が低い事業となっています。会計上の利益だけを分析をすれば、トータルパックプロデュース事業に特化し、メディカルサプライ事業は売却・撤退する方が効率的に見えます。しかし、メディカルサプライ事業によって、消耗品を管理するために病院に頻繁に出入りすることができます。結果、病院運営側との信頼が構築され、コンサルティングの案件獲得につながっているのです。非常に遠回りに見えるようで、合理的な事業展開となっています。
一方、現在の同社を取り巻く環境は、決して楽観できるものではありません。新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの医療機関の経営を圧迫しています。病院に行くことを控える動きが続いていることや、コロナ対応ための病床を確保するために不急の手術が延期されています。更に、半導体不足が医療機器の調達にも影響しています。結果、同社は3月に2022年3月期通期業績の下方修正を発表しました。同社の株価は下方修正以降、軟調に推移しています。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、大病院の機能強化の必要性を顕在化させました。医師の数が不足しているのではなく、高度な治療が行える医療機関の数が不足しているためです。将来、大病院は、更に高度化・大型化することが予想されます。ただし、当ファンドでは、病院運営側の心理が回復する、つまり大型の建て替え投資を実行したいと病院経営者が思うには、複数年の時間が必要となる可能性も感じています。当ファンドは、短期的には厳しいものの、引き続き同社の中期的な成長に期待しており、保有を継続する予定です。

 スパークス・少数精鋭・日本株ファンド | SPARX Asset Management

 

総合化学企業「堺化学工業」 ― スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド(愛称:ベスト・アルファ)

当月は、新たにロング投資を開始した堺化学工業をご紹介します。
同社は電子部品、医療、美容向けに酸化チタンやバリウムを基盤とした材料を製造、供給する企業です。これまで一定の産業、顧客に向けて良く言えば安定的、悪く言えば成長が見られない事業環境が続いてきたことで、株価は利益水準に対して低く評価されてきました。しかし自動車の電装比率の高まり、電気自動車の増加によって自動車向け積層チップコンデンサに対する需要・技術的要求が高まったことで事業環境は大きく変化し、同社材料に対する需要が急速に増加する公算が高くなりました。高い技術力を必要とする高付加価値材料が伸びることで、これまで低水準の需要をもとに減損を強いられた工場設備が急速に稼働を開始し、期間利益の成長だけでなく資産効率も大きく改善することが予想されます。自動車産業向けの中長期での需要拡大を追い風に利益成長による一株利益の増加に加え、資産効率、ROE(株主資本利益率)の改善によるPER(株価収益率)の評価切り上げによる2つの効果が後押しし、中長期での高い投資リターンが獲得できると当ファンドでは考えています。

スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド | SPARX Asset Management

 こちらのファンドも同じ内容を取り上げております。
スパークス・日本株・L&S | SPARX Asset Management

  

総合電動工具メーカー「マキタ」 ― スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド(愛称:対話の力)

マキタは、1915 年創業の総合電動工具メーカーです。1970 年代より海外展開を強化し、売上高の約 8 割を海外事業が占めるグローバルカンパニーです。
マキタは、2005 年に世界初となるリチウムイオンバッテリを採用した電動工具を発売して以来、独自のバッテリ充放電技術とモータ技術の開発を進め、充電式製品のラインアップを拡充してきました。一般的に充電式工具は、コードレス化による利便性の向上、エンジン式と比べた環境負荷の軽減等の利点がありますが、加えてマキタの充電式工具は、同じバッテリを複数の同社製品に使いまわせる互換性があることも大きな強みになっています。このような製品性能の高さに加え、アフターサービス網の充実、地域毎の特性に応じたきめ細やかな在庫管理等によって、マキタはボッシュ社(ドイツ)やスタンレー・ブラック・アンド・デッカー社(米国)といったグローバル大手競合企業から着実にシェアを奪ってきました。特に昨今は部品不足の影響を受け、一部の競合他社は十分な製品供給量を確保することが難しくなっており、平時から在庫を厚めにもっていたマキタは、市場シェアを拡大していると当ファンドは見ています。
(中略)一方、企業価値向上の観点から、同社にはさらなる改善余地があると当ファンドは考えています。
一点目は、資本収益性の改善です。過去10年を見ると、マキタの営業利益率は平均して15%前後で推移しています。一方、同期間中のROE(株主資本利益率)は10%前後と、事業収益性に比べて低位にとどまります。同社は生産能力拡大や営業拠点の拡充のため、2020 年 3 月期以降、設備投資を大きく増やしており、その結果、2020 年 3 月期末に総資産の 30%超を占めていた現預金・有価証券などの金融資産の割合は、足元で 20%前後へ減少していると推定されます。同社がグローバル市場における事業展開の加速を見据え、豊富な手元資金を積極的に成長投資へ活用していることは評価できます。しかしながら、現在のような高水準の設備投資が継続することは考えづらく、このまま株主還元方針が大きく変わらなければ、現状すでに 80%を超えている株主資本比率が今後さらに上昇し、ROE改善の重石になることは避けられません。将来の成長に資する投資として、設備投資のみならず M&A 等の戦略投資も考えられますが、M&A の資金ニーズが発生しない場合には、自社株買いにより、ROE 悪化を回避することが適切であると当ファンドは考えます。
二点目は、環境配慮型の製品として、より積極的に自社製品の訴求力を高めていくことです。
マキタの充電式製品を使用することで、エンジン製品を使用した場合と比較して実際に何%の CO2 排出量削減が実現できるのかを明示することは、自社製品を差別化する上でも重要と考えますが、現状ではそのような具体的な分析データは開示されていません。そのようなデータがあれば、例えばマキタ製品を導入している企業は、同社製品を使用することでどの程度 CO2 排出量を削減したかを把握し、脱炭素に貢献する取組みとして対外的にアピールすることも可能になります。日本を含む世界各国で TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに基づく情報開示が企業に対して義務化されつつあり、脱炭素へ向けた取り組みを求める流れが加速していくであろうことを踏まえれば、この種のデータの重要性はますます高まることが予想されます。充電式工具のパイオニアとして、マキタが業界内で積極的に環境性能評価の仕組みづくりをリードしていくことを当ファンドは期待しています。
当ファンドでは、充電式工具ビジネスの中期的な成長性、マキタのもつ技術力・開発力を高く評価しており、株主として対話を通じて同社の企業価値向上を後押ししていく方針です。

 スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド | SPARX Asset Management

 

 

以上、2022年3月の月次レポートをまとめてみました。どれも盛りだくさんの内容となっておりますので、是非リンクの各投資信託のページへ飛んでいただき、全文をご覧ください!

 

※こちらは2022年3月末のマンスリーレポートをもとに再編集しております。内容はチームメンバーの見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。また、記事にある企業名等の内容は参考情報であり、特定の有価証券等の取引を勧誘してはいない点もご理解いただけますよう、お願いいたします。

 

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