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投資先企業が「重要」だけど「目立たない」活動を進められるように、アナリストができること

みなさんこんにちは。スパークスのサステナブル投資チームです。

私たちは日本株ファンドの運用をしており、日々の活動内容をnoteや月次レポートで紹介させていただいています。


今回紹介するのは「ESGの強化」という点について企業との対話(エンゲージメント)を行うべく、関係構築をすすめた場面の紹介です。

ESGを強化するということは昨今の企業経営にとって「重要」ですが、業績に直結しないため「目立たない」活動です。
目立たないため、社内からも社外からも注目されません。
その結果、ともすると活動の推進力が落ちることにもなりかねません。

そのような「重要」だけど「目立たない」活動に光を当てるということは、中長期の目線で物事を考えるからこそできること。
つまり株式の投資家が活躍できる場面だと思います。

そこで、まずは企業側から「建設的な対話の相手」として見てもらうために我々が行っている対話の進め方を説明した上で、チームに入って3年目のアナリストが行ったHOYAとの対話の事例を通して、我々がどのように企業の活動に関わっているかをお伝えします。

当チームの対話の進め方

我々が企業との対話の際に第一歩として重要視しているのは良好な関係作りです。
良好な関係をつくれたかどうかを確認する一つの基準は、企業側から「建設的な対話の相手」として認めてもらえるかどうかという点です。
つまり「決算数値を伝えるだけの相手」としての存在を超えることが、まず目指す水準です。

そのためには「どのように話を進めるのか」というアプローチが重要になります。
ともすると「何を話すか」という議題を先に重視しがちですが、同じ質問でも聞き方によって返答内容の深さが変わるため、話の進め方はとても重要です。

対話の進め方を磨くには経験を積むことが必要ですが、現実にはチームメンバーによって経験値はさまざまです。
そこで経験の少なさを補うための工夫として、我々はチーム内で以下のような「対話の基本プロセス」を共有するという取り組みをしています。

対話方針の説明
我々はまずミーティングの冒頭に当チームの「対話方針」を提示して、我々の対話についての基本姿勢を伝えます。
対話方針の説明は、我々が単なる情報収集以上の意義をミーティングに求めているということを投資先企業に理解していただくことを目的としています。

課題共有
対話方針の説明に続き、課題共有のための質問をします。
経営課題を共有することで、会社の向かう方向を深く理解できますし、一緒に考えることで企業が前進する力になれると考えているからです。

傾聴
企業側から示される課題認識は我々の考えと合致していることもあれば、合致していないこともあります。
ここで、我々は合致していてもいなくても、会社側の意見をしっかりと受け止めて、会社の話したいことに「寄り添う」というスタンスを重視しています。
そうすることで会社側と信頼関係を築くことができ、結果として会社側の状況や考え方に対して深い理解をすることができるためです。

意見交換
会社側の状況を踏まえた上で、より詳細な内容について追加の質問をしたり、フィードバックとしてこちらからの意見を提示したりします。
「傾聴によって相手の状況を踏まえる」というステップを入れることで、先方に我々の意見が伝わりやすい状況とします。

アンケート
我々はミーティングの後に、企業側にアンケートに回答いただき、我々との対話に満足いただけたか、どのような対話を望んでいるのか、などの点について把握するように心掛けています。

HOYAの概要と我々の見解

具体的な対話内容をより理解いただくために、HOYAについての概要と我々の投資見解について簡単に触れさせていただきます。

HOYAは1941年創業の光学製品メーカーです。主な事業分野は情報通信分野とライフケア分野です。

情報通信分野はハードディスク部品や、半導体の製造部材を主力しています。高いマーケットシェアを背景に営業利益率40%強と非常に高採算のセグメントです。
一方のライフケア分野はメガネレンズを主力に、コンタクトレンズ、眼内レンズ、内視鏡などの事業を展開しています。市場成長とシェア拡大によって売上成長が期待されている部門です。採算性は情報通信分野には及びませんが、ライフケア分野の利益率は20%前後と十分に高い水準となっています。

HOYAは日本企業では珍しく鈴木CEO(最高経営責任者)を除く全員が社外取締役という、「株主に開かれた取締役構成」となっています。
株主利益への関心が高く、しっかりとキャッシュを稼ぐ一方で、余剰なキャッシュは持たずに積極的に自社株買いを通じて株主に還元するという方針が明確です。
当ファンドではHOYAの優れた事業運営と規律の働いたガバナンス姿勢を評価して投資を続けています。

ESGについての同社の投資家向け開示ですが、従来はG(ガバナンス)に偏っており、E(環境)とS(社会)に対してどのように関わっていきたいのかというメッセージはあまり積極的に開示されていませんでした。
しかし、ここ最近はESG全般への開示に積極化の動きがみられており、この改善方向を我々は評価しており、更なる改善を期待しています。

対話内容

HOYAとの対話で、アナリストはまず基本プロセスに則り、「対話方針」を提示して、我々の対話についての基本姿勢をお伝えし、それに続いてアナリストは業績アップデートを含むさまざまな質問を通じて企業の状況を把握し、その上で「中長期の課題」についての質問を行いました。

それに対して、会社側から示された課題認識は「ESGについての対応を強化する必要がある」という内容です。
この課題認識は我々の考えと合致していたため、アナリストは会社側の課題解決のプロセスに関心を示し、これまでの取り組みの中で難しかったことについては具体的な質問を続けました。

会社側からはカンパニー制組織におけるESG対応の難しさ、それを受けたIRチームの情報収集活動における工夫、鈴木CEOのESGに対する課題認識などが説明されました。

その内容はHOYAが今後ビジネスの中にESGを組み込むことや、更なる価値を生み出すだろうと確信を持つのに十分な内容であったため、アナリストからは今後の展開に対して期待が持てる旨のメッセージを伝えました。

この対話を経て、我々は「中長期の方針を一緒に考える対話先」として見てもらえるようになった模様で、「更に深い対話をしていきたい」という趣旨のご意見をいただきました。
会社側から示された課題認識に対して、それを単にリスク要素とみなすことや一般的な解決方法を提示するというような対応ではなく、改善に向けてのプロセスを共有しようとしたことは会社側の満足につながったと思われます。

ミーティング後にアンケートに回答いただき、我々との対話のどのような点が会社側に意味のあるモノだったのか、次のステップとしてどのような対話を望んでいるのかということについて把握させていただきました。
いただいた意見を踏まえ、我々は重要な点について焦点を当てて次回の対話を行うことを検討しています。

以上が、直近のHOYAと当チームのアナリストの対話内容です。
このミーティングのみで何かの課題を解決したわけではありませんが、「関係構築」という観点からは十分な内容であったと我々は考えています。

まとめ

ご覧いただいたように、我々の対話はミーティングの場だけで投資先企業に「劇的な変化を及ぼすような仕組み」にはなっていません。

しかし、このようなプロセスを続けることで少しずつ投資先企業との信頼関係を築くことが、長い目で見たときによりよい対話につながると我々は考えています。

また、対話の中で経営課題を一緒に考えるという姿勢が企業側に新たな「気づき」を与え、その後の対話を活発化させる力になると考えています。

特に「ESGの強化」のように「業績に直結しないような活動」は、中長期目線で重要であったとしても、外部からはなかなか注目されずフィードバックがなされることも多くないようです。
注目されなければ経営陣も重要性を感じることができず、活動の推進力が落ちることも起こり得ます。

そのような「重要にもかかわらず目立たない業務」を投資家側から議題として取り上げて一緒に考えることは、一見地味ですが投資先企業を側面から支援することにつながるため、意義のある活動であると我々は考えています。


今後も、HOYAを含めた投資先企業各社と対話を続けていくことで、企業価値向上のサポートと優れた投資パフォーマンスの構築を目指してまいります。

引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

※こちらはサステナブル投資チームによる2021年2月末のマンスリーレポートをもとに再編集しております。内容はチームメンバーの見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。また、記事にある企業名等の内容は参考情報であり、特定の有価証券等の取引を勧誘してはいない点もご理解いただけますよう、お願いいたします。

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独立系投資会社スパークス・アセット・マネジメントの公式noteです。 「もっといい投資をしよう!」を合言葉に、投資への思いを語る場にしたいと思います。