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第1回 誰でもバフェット氏の「投資」を実践できる方法はあるのか?

皆さま、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

新たな年を迎え、資産運用を本格的に始めたい!という方も多いのではないでしょうか。

資産運用が普通のことになりつつある中で、プロに運用を任せられる投資信託の重要性も日に日に高まってきています。

一方で投資信託は、その数が多いことから選ぶ難しさが指摘されています。2020年11月現在、ETF・MRFを除く追加型投資信託はなんと、5,554本(!) (*1)も存在しているのです。*1:出所;Fundmark

それだけで投資信託の活用を諦めてしまう方もいるのではないでしょうか?また、何となくその時人気があった投資信託を選んだが、その後人気もパフォーマンスも衰えてしまった、という苦い経験をした方もいらっしゃると思います。仮に自分で苦労して選んだ投資信託であったとしても、果たして自分にとって正しい選択であったのか、いまいち確信が持てない方も多いのでは?

そこで、スパークスにおいて運用分析や投資信託、運用戦略の設計に携わってきた社員が、自身の資産運用でどの様に投資信託を選んでいるのか、ということについて連載を始めたいと思います。

この連載を読めば、少なくとも我々がどういう投資信託がベストであると考え、どのような資産運用を行っているかがわかります。これが皆さんの投資信託の選定における一助になれば幸いです。

なお、一部の情報は著者の意見又は見解であり、スパークス全体の見解と異なることがありますのでご承知おきください。

ウォーレン・バフェット氏がインデックス投資を推奨?

「私の投資アドバイスはこれ以上ない程にシンプルです。10%を短期国債に、残りの90%を非常に低コストのS&P500インデックス・ファンドに投資するという手法です。」

これはバークシャー・ハサウェイ社の年次報告書(2013年)「ウォーレン・バフェットから株主への手紙(Warren Buffett's Letters to Berkshire Shareholders)」の中で語られた、彼の遺言の中に書かれている妻への助言です。
https://berkshirehathaway.com/letters/letters.html

この一文だけが切り取られ、日本では「ウォーレン・バフェット氏はインデックス投資を推奨している」と捉えられていることも多いようです。

この助言の解釈は様々ですが、一つは彼の考える「投資」ができない人は、インデックスを長期にわたって積み立てるべきである、ということかもしれません。このお話の本質をもう少し探ってみましょう。

バフェット氏の考える「投資」とは?

ではバフェット氏の「投資」とは何を指すのでしょうか?これについても同じ年次報告書の「投資に関する所感(Some Thoughts About Investing)」の中に書かれています。

“Investment is most intelligent when it is most businesslike. ”
(意訳:投資は、事業を買うように行われた時、最も知的な行為となる

この引用はバフェット氏が師と仰ぐ、ベンジャミン・グレアム氏の著書「賢明なる投資家」の中で書かれた一節です。この言葉をバフェット氏は「投資について書かれたことの中で、最も重要な言葉」であると語っています。

これはどういう意味なのでしょうか?

例えばバフェット氏は、株式をビジネスの一部分と考えて投資しています。従って、彼の分析は、ビジネス全体を購入するときに使用する分析と全く同じです。

まず、5年もしくはそれ以上の収益範囲を賢明に見積もることができるかどうかを判断します。見積もることができる場合、見積もりの下限に対して妥当な価格で売られていれば、株式(事業)を購入します。ただし、将来の収益を見積もる能力がない場合(通常はその場合が多い、とバフェット氏は語っています)、単に他の投資候補に移ります。


つまり投資の神様と呼ばれるバフェット氏でさえ、わからないものには投資しないのです。

バフェット氏が好んで使っていた言葉に、「Circle of Competence」というものがありますが、これは“事業の経済性について判断することのできる能力の範囲”、つまり自分の理解の及ぶ範囲のことを指しています。

同氏の名言に、「自分の能力の範囲で投資しなさい。その範囲が大きいかどうかは問題ではない。どれだけ“はっきりと線が引けるか”が重要だ」というものがあります。「リスクは、あなたが何をやっているか理解していないときに起こる。」こちらも彼の言葉です。

「分刻みの呪い」にかからない

もうひとつ、前述の「Some Thoughts About Investing」には、バフェット氏が過去に投資した農場と不動産の話があります。この二つの投資事例、どちらも成功を収めているのですが、文章の中でバフェット氏は、農場へ訪れたことは「購入時と最近の2回だけである」と語っています。そして不動産に至っては、「まだこの物件を見たことがない」とまで書かれているのです。

「私はこれらの物件が何を生み出すかだけを考え、毎日の価格についてはまったく気にしませんでした。 ゲームとは、スコアボードに目が釘付けになっているプレーヤーではなく、競技に集中しているプレーヤーが勝つものなのです。」

このバフェット氏の言葉を基に、この二つの物件投資事例と株式投資との違いについて考えてみてください。彼は、それは「二つの投資事例と異なり、良くも悪くも株式投資は保有銘柄の株価を分刻みで教えてくれる」ところにあると言っています。

本来であれば流動性(いつでも買ったり売ったり出来ること)は、投資家にとってメリットとなるはずですが、この「分刻みの呪い(株価によって行動が左右されてしまうこと)」によって、投資家は得てして、非合理的な行動をとってしまう、とバフェット氏は警笛を鳴らしているのです。
実際、バフェット氏は過去54年間、マクロや政治的環境、または他の人々の見解に影響されて魅力的な投資を見送ったことは決してありませんでした。あくまで長期的なビジネスの本質を見ているのです。

投資を事業を買うように捉え、自らが理解できる領域において、実態価値(企業価値)よりも低い市場価格(株価)で長期投資をすることが出来れば、外部要因に関係なく、投資は成立する。
それが出来ないのであれば、(「分刻みの呪い」によって非合理的な行動に走ってしまう前に)S&P500インデックス・ファンドに投資しておいた方が良い。
それでも十分満足な投資リターンは得られるであろうし、あなたにはもっと大切な(他にやらなければいけない)ことがあるだろう。

これが、バフェット氏が本当に伝えたかったことであると、我々は考えています。

誰でもバフェット氏の「投資」を実践できる方法はあるのか?

ここまで読み進めていただいた読者のみなさんは、「よし、自分もバフェット氏のように、事業を買うかのような個別株の投資を始めよう!」と思ったかもしれません。かといって、誰でも自分で個別株投資ができるわけでもありません。「分刻みの呪い」に耐えるのも自分の大切なお金がかかっている以上、なかなか難しいことだと思います。

バフェット氏とまでは言わなくても、彼のような投資を自分の代わりにやってくれるプロがいればいいのではないでしょうか。

これを我々が実際に取れる行動に言い換えると、つまりそれは「①市場平均リターンを超過するアクティブ・ファンドが存在し、②そのファンドを選ぶ」ということになります。
日経やTOPIXのインデックス・ファンドに長期積み立てをするのも一つの手ですが、実態価値よりも低い価格の個別株をきちんと選んで投資するアクティブ・ファンドを選択できれば、さらなるリターンが得られるはず、ということです。

そして、特に日本・アジア株式市場において、この①と②は成立する、と我々は考えています。つまり「アクティブ運用はバフェット氏の考える投資が自分ではできない人にとっての最良の選択肢である」という考え方です。

我々のこの考えを、バフェット氏の言葉を借りて表現するのであれば、「投資を事業を買うように捉え、実態価値よりも低い価格で投資をすることを目指しているファンドを選別することが重要である」ということになります。
つまり、この基準に合致するファンドを選定することが、「投資信託の選び方」において最も重要な「原則」であると言えるのではないでしょうか。

次回以降、「投資信託の選び方」について、様々な観点からお話していきたいと思います。


引き続き、ご愛読の程どうぞよろしくお願いします。

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