白黒つけることだけが責任ある投資態度とは限らない
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白黒つけることだけが責任ある投資態度とは限らない

みなさん、こんにちは。スパークスのサステナブル投資チームです。


突然ですが、ファンドマネージャーにとっての「責任ある投資態度」とは、いったいどんなものでしょう?
運用しているファンドのパフォーマンスを高めること。これは当然です。
良い会社に投資して、良くない会社に投資をしないこと。これも今や当然と言えるでしょう。
ただ、話はそんなに単純ではありません。

例えば、読者のみなさんは「環境負荷の大きい事業や社会の健全性を害する事業には投資しない」、という判断に違和感を覚えることはないと思います。
一方で、全ての企業が必ずしもそういった課題事業のみで構成されているわけではありません。一部、そういった課題事業を行っている企業に対しては、どういった投資態度をとるべきでしょうか?

今回は伊藤忠商事の投資見解と対話内容を交えながら、当戦略の考える責任のある投資態度の一つについてお伝えしたいと思います。

※こちらはサステナブル投資チームによる2020年11月末のマンスリーレポートをもとに再編集しております。内容はチームメンバーの見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。また、記事にある企業名等の内容は参考情報であり、特定の有価証券等の取引を勧誘してはいない点もご理解いただけますよう、お願いいたします。

背景

伊藤忠商事は、1858年に創業者の伊藤忠兵衛氏が繊維の卸売りを行ったことに起源を持つコングロマリット(複合企業)です。繊維製品の取り扱いで創業した同社は、現在も生活者に近い消費材関連を主力事業としており、そのほかに情報サービスやファイナンスなどの「企業向けのソリューションサービス」でも定評があります。

伊藤忠商事の業績推移をみると、業績の安定感を保ちながら成長をとげてきた様子が見てとれます。特に現CEO(最高経営責任者)の岡藤氏が社長に就任した2010年4月から2020年3月までの業績を振りかえると、純利益は就任直前期の1,281億円 から5,013億円へと約4倍に成長しています。また資本効率という点でも、この間の同社のROE(株主資本利益率)は10~ 24%の間で推移し、日本企業の平均4~10%(*1)をはるかに上回る実績を上げています。
*1:出所;経済産業省政策局、TOPIX500のうち402社(金融業及び継続してデータを取得できない企業を除く)

コングロマリットを投資対象としてどう評価するか?

コングロマリットは、多様な事業を営むことから各事業が好不調を補い合うことで業績変動リスクを抑えられるという利点があります。一方で、複数の事業を営みながら持続的に成長するには高い経営力が求められます。

そこで、当戦略ではコングロマリットを投資対象として評価する際には、①事業ごとの採算管理、②事業間シナジーの創出、③適切なポートフォリオ管理、という三点における卓越性を見極めることを重要視しています。

伊藤忠商事について上記三点を見てみると、一つ目の「事業ごとの採算管理」については高いレベルを実現していることが見てとれます。同社が開示しているデータによると、2020年3月期において連結対象会社数289社のうち、黒字会社の割合は87%です。先行投資段階の会社も一定程度存在することを勘案すると、業績不振で赤字に陥っている会社は少ないと見てとることができます。

二つ目の「事業間シナジーの創出」においては、同社が近年上場している関連会社の株式を買い増しすることで協力関係を強化していることが確認できます。象徴的な案件は今年行われたコンビニエンスストア事業の㈱ファミリーマートの完全子会社化です。コンビニエンスストアは生活関連商材全般を直接消費者に販売する業態であることから、「伊藤忠商事グループ内の多くの事業部門が関わるシナジーのハブ」として位置づけられています。一方で関連会社株式の買い増しは副作用がある点には注意が必要です。出資比率の引き上げが他の株主に対するメリットとして見えにくいケースもあるため、この点については注意が必要です。

三つ目の「適切なポートフォリオ管理」については、明確な事業選別基準を設けて、着実な業績を上げてきた点は評価できるものの、主力外の資源関連事業を保有し続けている点は課題であると言えます。特に地球温暖化ガスの排出量の多い石炭に関連する事業については、世界中で使用を抑制しようとする動きがあることから、関与し続けることの事業リスクや評判リスクが無視できないと考えられます。

石炭関連事業は同社の利益構成の5%に満たない水準であると推測され、事業撤退によって利益が減少したとしても同社の企業価値評価を引き下げるリスクは限定的と考えられます。

投資をした上で対話を行うことも「責任のある投資態度」

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サステナブル投資戦略では伊藤忠商事と継続的にミーティングを行い、上記のような課題認識を持ち、特に資源関連事業についての見直しを求める姿勢で対話に臨んでまいりました。

会社側から2019年の2月に「新規の石炭火力発電および一般炭炭鉱事業について投資を行わない」というポリシーが発表されたことから、当戦略からはこのような「前向きな変化」を歓迎する旨を同社に伝えています。しかし、既保有の石炭火力発電および一般炭炭鉱事業に関する資産の取り扱いについて はまだ明確な方針が述べられていないため、当戦略は同社に「完全撤退に対する期待」を伝えております。

注:2021年1月13日に発表されました伊藤忠商事の「2021~2023年度中期経営計画骨子」にて、一般炭事業の完全撤退の方針が掲げられました。

なお、当戦略では環境負荷の大きい事業や社会の健全性を害する事業には投資しないことを基本方針としています。 石炭関連事業も時代の流れの中で投資には適さない事業になったと考えています。

ただし、伊藤忠商事のように石炭関連事業から撤退しても会社の存続に影響がなく、実際に撤退した場合に株価評価が高まる可能性がある企業に対して、同社株式に投資をした上で経営方針の見直しを伝えるために対話を行うことも、責任のある投資態度の一つであると考えております。


スパークスのサステナブル投資戦略は日本版スチュワードシップ・コードや国連が支援するPRI(責任投資原則)の考え方に準拠し、良質なパフォーマンスを追求すると同時に、よりよい社会を構築する一助となるべく企業との対話を行い、優れた投資先企業を選別した上で株主として支えてまいります。

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独立系投資会社スパークス・アセット・マネジメントの公式noteです。 「もっといい投資をしよう!」を合言葉に、投資への思いを語る場にしたいと思います。